文学作品を深く読むこと ― 教養とは何か | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

文学作品を深く読むこと ― 教養とは何か

生きる力の土台を形成する物語の作用

廣野 由美子 HIRONO Yumiko
京都大学大学院人間・環境学研究科 教授

講義概要

本講義では、19世紀のイギリスの女性作家ジョージ・エリオットの代表作で、世界文学としても名高い小説『ミドルマーチ』を教材として用いて、文学作品を深く読む方法について学びます。まず、小説がどのような要素によって成り立ち、いかに仕組まれているかという技法的観点から切り込む方法として、「語りの形式」や「象徴」の読み解き方などについて考察します。次に、経済・社会・歴史・倫理・宗教・心理・教育・芸術といった<教養>の諸部門を取り上げて、それぞれの観点から、「人間とは何か」という問題が作品においてどのように追究されているかを、実例を挙げながら提示します。それによって、小説の奥に、いかに深くまで読み込むことのできる鉱脈が横たわっているか、多様な解釈の可能性が含まれているかが、明らかになるでしょう。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

<物語>は、世界や人間に関わるさまざまな問題について諸学問が理論的に明らかにしようとしていることを、生き生きとした具体的な実例として、私たちが切実に理解できるまで、真に迫った形で提示してくれます。のみならず<物語>は、諸学を個々ばらばらのものとしてではなく、根元の部分でつなぐ役割を果たします。それゆえ、文学ジャンルのなかでも、ことに人間を描くことに主眼を置いた物語形式である小説は、真の意味での<教養>を培ううえで、私たちに大きな力を与えてくれるものだと言えるでしょう。文学には、人間の生きる力の土台を形成する作用が含まれているといっても過言ではありません。

講師プロフィール

経歴

1958年大阪府生まれ。京都大学文学部(ドイツ文学専攻)卒業。神戸大学大学院文化学研究科博士課程(英文学専攻)単位取得退学。学術博士。専門は英文学、イギリス小説。山口大学教育学部助教授、京都大学総合人間学部助教授を経て、2008年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。2016~2019年、文部科学省科学官。日本ジョージ・エリオット協会会長、日本ブロンテ協会理事、日本英文学会関西支部理事。NHK Eテレ「100分de名著」の『フランケンシュタイン』『高慢と偏見』にゲスト講師として出演。1996年、第4回福原賞受賞。

著書

『小説読解入門―「ミドルマーチ」教養講義』(中公新書)、『批評理論入門―「フランケンシュタイン」解剖講義』(中公新書)、『ミステリーの人間学-英国古典探偵小説を読む』(岩波新書)、『深読みジェイン・オースティン―恋愛心理を解剖する』(NHK出版)、『謎解き「嵐が丘」』(松籟社)、『一人称小説とは何か―異界の「私」の物語』(ミネルヴァ書房)、『視線は人を殺すか―小説論11講』(ミネルヴァ書房)、『十九世紀イギリス小説の技法』(英法宝)など著書多数。訳書に、ジョージ・エリオット『ミドルマーチ』1~4(光文社古典新訳文庫)、ティム・ドリン『ジョージ・エリオット』(彩流社)など。

  • Document request

    プログラムの受講に関するお問い合わせ、
    資料請求はお気軽にご連絡ください。

  • Mail magazine

    最新情報のお知らせや無料イベントのご案内をしております。ご興味のある方は是非、ご登録ください。

  • Contact

    ご相談やご質問など、お気軽にお問い合わせください。