想像するちから

チンパンジーが教えてくれた人間の心

松沢 哲郎 MATSUZAWA Tetsuro
京都大学高等研究院 特別教授
京都大学霊長類研究所兼任教授

講義概要

人間の体が進化の産物であるのと同様に、その心も進化の産物だ。研究室で、アフリカのフィールドで、人間にもっとも近い進化の隣人、チンパンジーに寄り添って研究を進めてきた。チンパンジーを深く知ることで、人間の心がたどってきた歴史を明らかにする。その結果「想像するちから」こそが、人間を人間たらしめていると考えるようになった。チンパンジーにも心があり、人間より優れた記憶の能力がある。人間には、チンパンジーより豊かな「想像するちから」がある。地球の裏側の出来事に思いをはせ、未来に希望を持つ。そして、互いに分かち合い、思いやり慈しむ心「愛」をはぐくむ。「心」と「ことば」と「きずな」を中心テーマに、教育や親子関係や社会の進化的な起源を考える。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

霊長類学、比較認知科学によって、人間を含めた「自然」まるごと全体を捉えることで「人間とは何か」という人間の本性についての深い理解が可能となり、人間中心の世界観だけではない、新しい視点が獲得できる。
アフリカ、アジア、南アメリカなど、霊長類を始めとする野生生物の生息地での研究を通して、世界を相手に地球社会の未来をデザインする能力、海外展開に欠かせない俯瞰力と国際性に富むリーダーとしての能力が育まれる。
霊長類学は京都大学を中心に日本が世界をリードしてきた学問分野である。その研究成果は科学的に高く評価されるとともに、アウトリーチ活動や環境保護、動物園での動物福祉の実践につながり、より良い社会の実現に貢献する。

講師プロフィール

経歴

1974年京都大学文学部哲学科卒業、理学博士。1976年京都大学霊長類研究所助手。1987年同助教授。1993年同教授。2016年同定年退職(2006~2012年京都大学霊長類研究所所長、2009~2015年国際共同先端研究初代センター長)1977年11月から「アイ・プロジェクト」とよばれるチンパンジーの心の研究を始め、野生チンパンジーの生態調査も行う。 チンパンジーの研究を通じて人間の心や行動の進化的起源を探り、「比較認知科学」とよばれる新しい研究領域を開拓した。現職は2016年4月京都大学高等研究院特別教授(京都大学霊長類研究所兼任教授)、文部科学省博士課程教育リーディングプログラム「京都大学霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院」プログラムコーディネーター、中部学院大学客員教授、立命館大学招聘研究教授、中部大学創発学術院特別招聘教授コーディネーター、京都造形芸術大学文明哲学研究所所長、公益財団法人日本モンキーセンター所長、京都大学学士山岳会会長。国際誌Primates(プリマーテス)編集長。1991年秩父宮記念学術賞、1996年中山賞特別賞、1998年日本心理学会研究奨励賞、2004年中日文化賞、2004年日本神経科学会時実利彦記念賞、2004年紫綬褒章、2013年文化功労者。2014年日本心理学会功労賞特別賞。

著書

『想像するちから』岩波書店(2011年)第65回毎日出版文化賞受賞、科学ジャーナリスト賞2011受賞、『Cognitive Development in Chimpanzees』Springer(2006)編集、『The Chimpanzees of Bossou and Nimba』Springer(2011)編集 など多数。