統治機構改革の展望 | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

統治機構改革の展望

現代社会における憲法の意味と役割を考える

大石 眞 OHISHI Makoto
京都大学 名誉教授

講義概要

憲法と聞いて条文化された憲法典を基にした理想的な規範を思い浮かべる人は多い。本講義は、そうした憲法典の規定のみから想定されたあるべき憲法のイメージによることなく、国政の組織・内容・手続に関する原理や規範はどのようなものかという問いとともに、その実際の運用はどうなっているかという視点から、国民と議会、議会と政府、政治と司法、国家と財政などの統治機構の全般に関する改革への展望を得ることを目的とする。そのため本講義では、現代の憲法制度を支える立憲民主制の諸要素を確認するとともに、比較法史的な素材と国家論的な知見を提供しつつ、とくに半直接民主制(選挙制度を含む)、議院内閣制(国会改革を含む)、司法審査制・財政立憲主義・地方自治などに関する主要論点を検討することによって、統治機構をめぐる議論を深く理解し、リードするのに必要な見識を修得できるようにしたい。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

現行憲法の施行から70年余りを経た今日、ただ一度の改正をも経験していない憲法典の条文解釈に終始した憲法論議は、一種の飽和状態に達した感がある。他方、憲法典の改定を標榜し、これまでの憲法解釈論と対蹠的であるはずの憲法改正をめぐる論議も、一種の閉塞状況に陥っているように見える。憲法改正の是非を論じ、それをめぐる動きをどのように見るかが問われている今日、本講義とこれに基づく研究によって、これまでの固定的な解釈論や伝統的な枠組みに囚われることなく、斬新な統治機構の構想を打ち出すとともに、飽和状態に達した憲法解釈論と閉塞状況に陥った憲法改正論を超えた、未来志向の統治機構改革論を展開することができる。

講師プロフィール

経歴

1951年宮崎県生まれ、1974 年東北大学法学部卒業後、同助手・國學院大学助教授・九州大学教授などを経て、1993年に京都大学大学院法学研究科教授、2006 年に同大学公共政策大学院教授、2008 年同大学公共政策大学院長を経て、2014 年同大学総合生存学館(思修館)教授、2017年定年退職し、現在京都大学名誉教授。学界では日本公法学会理事・比較憲法学会理事長・宗教法学会理事長を務めており、社会的活動としては、参議院の将来像を考える有識者懇談会委員(1999 年4月~ 2000 年4月)、首相公選制を考える懇談会委員(2001年7月~ 02年8月)、放送大学客員教授(2004年4月~ 12年3月)のほか、宗教法人審議会委員・同会長(2001年4月~ 12年3月)、衆議院議員選挙区画定審議会委員(2004 年4月~ 14 年3月)、衆議院選挙制度に関する調査会委員(2014 年7月~ 16 年1月)、京都府土地収用事業認定審議会会長(2002年12月~ 18 年12月)などを歴任し、現在、法制審議会委員などを務めている。

著書

主な著書に、『議院自律権の構造』成文堂(1988 年)、『議院法制定史の研究』成文堂(1990 年)、『日本憲法史の周辺』成文堂(1995 年)、『憲法と宗教制度』有斐閣(1996 年)、『立憲民主制』信山社(1996 年)、『憲法史と憲法解釈』信山社(2000年)、『議会法』有斐閣(2001年)、『日本憲法史〈第2 版〉』有斐閣(2005 年)、『憲法秩序への展望』有斐閣(2008 年)、『憲法概観〈第7版〉』有斐閣( 共著、2011年)、『憲法断章』信山社(2011年)、『憲法講義Ⅱ〈第2 版〉』有斐閣(2012年)、『憲法講義Ⅰ〈第3 版〉』有斐閣(2014 年)、『権利保障の諸相』三省堂(2014 年)、『判例憲法〈第3 版〉』有斐閣( 共編著、2016 年)、『統治機構の憲法構想』法律文化社(2016 年)、『国会を考える』三省堂( 共編著、2017年)などがある。

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