正義論 | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

正義論

正義のフロンティアを探る

宇佐美 誠 USAMI Makoto
京都大学大学院地球環境学堂 教授

講義概要

分配的正義の研究は、過去50年間にいちじるしく発展してきた。この講義では、分析と論争の焦点となっている2つの論点をとりあげて、最先端の研究状況を分かりやすく概説する。
第1は、運平等主義の是非である。運平等主義とは、各人が左右できない状況にもとづく不遇に対しては社会的な補償・救済をおこなうべきだが、各人の選択に発した不遇には補償・救済をおこなうべきでないという立場をさす。
第2は、再分配の目標は何かという論点である。格差の最小化をめざす平等主義、より不利な人に利益を与える優先主義、万人に一定の閾値までを保障する十分主義が提案され、三つどもえの論争が続いている。これらの論点について学び、考え、論じあうことにより、受講者が自ら正義について深く考えることをめざす。
各回の授業は講義セッションと質疑・討論セッションに分かれ、後者の時間には活発な自由討議をおこなう。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

近年、「格差社会」・「ワーキング・プア」などの語が示すとおり、格差や貧困への問題意識が高まる一方で、「自己責任」の論調も広く見受けられる。海外に目をむければ、途上国には極度の貧困にあえぐ膨大な数の人々がいる。わが国において、さらには地球全体で、再分配にあたって個人の責任はどこまで問われるべきか、また再分配は何をめざすべきか。分配的正義の法哲学的研究は、努力も運も大きく異なった人々がともに生きてゆく上で、決して避けることができない実践的問題を学術的に解明する。その基本事項を習得し、自由に意見を出しあい、活発に討論しあう経験は、大規模な経済成長がもはや望めず、かぎられたパイの分配がますます厳しさを増す日本社会において、あるべき社会の姿を自ら構想するための確かな一歩となるだろう。

講師プロフィール

経歴

1989 年名古屋大学法学部卒業、1991年同大学大学院法学研究科博士課程(前期)修了。1996 年博士( 法学)(名古屋大学)。1991年名古屋大学法学部助手、1993 年中京大学法学部専任講師、1996年助教授、2002年教授、2004 年東京工業大学大学院社会理工学研究科助教授、2008 年教授を経て、2013 年より現職。高知工科大学客員教授を兼任。1997~1999 年にハーバード大学哲学部客員研究員。日本公共政策学会元副会長・理事。日本法哲学会理事、法と経済学会常務理事、日本学術会議連携会員。専門は法哲学・政治哲学。

著書

『公共的決定としての法』木鐸社(1993 年)、『決定』東京大学出版会(2000 年)、『世代間関係から考える公共性』東京大学出版会(2006 年 共編著)、『法学と経済学のあいだ』勁草書房(2010 年 編著)、『ドゥオーキン』勁草書房(2011年 共編著)、『法思想史の新たな水脈』昭和堂(2013 年 共編著)、『グローバルな正義』勁草書房(2014年 編著)、『法哲学』有斐閣(2014 年 共著)、『気候正義』勁草書房(2019 年 編著)、『正義論』法律文化社(2019年 共著)、『AIで変わる法と社会』岩波書店(2020年 編著)、『気候崩壊』岩波書店(2021年)、Governance for a Sustainable Future, Springer (2023, co-editor) など。

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