仏教における「正念」

「三慧」でマインドフルネスを正す

マルク=アンリ・デロッシュ Marc-Henri Deroche
京都大学大学院総合生存学館(思修館)准教授

講義概要

 本講義では、東洋と西洋の重要な思想的資源を統合することで、あらためて「生存の智慧」を探る。第一に、東洋の諸伝統、とりわけ仏教において、智慧の発展が伝統的にどのように考えられてきたのかを、「聞・思・修」の進行過程に即して考察する。第二に、このモデルを、「智慧の探求」と見なされた古代ギリシア哲学と比較検討し、共通点と相違点を解明する。最後に、そうした古代の智慧がどのように再生され、現代の哲学、科学、社会に統合されるかを考察する。具体例としては、仏教の身心技法やに関する認知科学とその「マインドフルネス」(この文脈では注意と気づき)の技法と言った新しい応用についての近年の研究を取り上げる。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

 本講義では、東洋と西洋における古来の知的遺産の再考を通して、各自がグローバルな展望を獲得し、発展させるための基本的な参照軸を提供するものである。また、東洋と西洋の思想を比較検討は、日本の文化遺産への新しい視点をもたらすものでもあるため、それが将来の持続可能で調和的な共生にどのように貢献しうるものか、あらためて考える機会となる。加えて、仏教と身心技法や「マインドフルネス」の技法に関する学際的研究は、健康管理・教育・リーダー育成において今やますます多く応用されてきており、本講義では、そうした東洋と西洋の新たな統合の挑戦について検証することで、普遍的な視座から生存の智慧を理解する端緒を与える。

講師プロフィール

経歴

フランスのポワチエ市に生まれ、2000年ボルドー第2ヴィクトル・セガレン大学人文科学部社会人類学・民族学科卒業。2002 年同大学人文科学研究科社会人類学・民族学科専攻修士課程修了。2005年フランス国立高等研究実習院(EPHE、パリ) 宗教学専攻修士課程、2011年専攻博士後期課程終了、博士(文学・東洋学)(フランス国立高等研究実習院、EPHE、パリ)。同時に2008年から2013年まで京都大学大学院文学研究科文献文化学専攻(仏教学専修)留学、博士後期課程終了。2012年から 2015年までアンスティチュ・フランセ関西 - 京都(旧関西日仏学館)で思想史の講義担当者。2013年より京都大学白眉センター特定助教。2015年より現職。2019年よりMind and Life Institute(米国)のフェロー。研究は仏教における心の哲学と瞑想論。特にヒマラヤ・チベット仏教の文献研究と現地調査を中心とする。総合生存学館のマインドフルリビング研究会の担当教員。

著書

主要著書は『Revisiting Tibetan Philosophy and Religion』AMI (2012年 共編著)、『Une quête tibétaine de la sagesse. Prajñāraśmi (1518-1584) et les sources de l’approche impartiale』(近刊 単著)など。研究論文は『Philosophy East and West』、『Asian Philosophy』、『Bulletin of Tibetology』などの査読付きジャーナルで出版。