〈からまりしろ〉としての建築

生命のような建築をつくることは可能か

平田 晃久 HIRATA Akihisa
京都大学大学院工学研究科 建築学専攻 教授

講義概要

かつて昆虫少年だった私は、昆虫たちが生きている自然環境と、自分たちが生活している建物の空間がどうしてこんなに違うのだろう、と思っていました。建築はもっと自然環境のような質を獲得できるはずであり、人間たちは自らの動物的本能を呼び覚まされるような都市・建築環境の中で、もっと生き生きと活動できるはずなのです。
建築を自然と対立する人工物としてではなく、生態系の一部として根本的にとらえなおすこと。〈からまりしろ〉(=からまる余地〔しろ〕)はそんな建築のための造語です。一本の樹木に鳥たちがからまるように、人間が自らの場所を見出せる、〈からまりしろ〉としての建築がつくれないか。そんな問いから生まれた様々な建築の実践を紹介したいと思います。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

〈からまりしろ〉の概念は、均質でコントロール可能な「空間」を標榜してきた前世紀的な建築を越え、より立体的で自然環境のような質を持った建築や都市環境が生まれるための理論的支柱です。
それは、第一義的には従来と異なる三次元的で自然的要素とからまり合う新しい建築形態とつながります。また、市民ワークショップを通じてつくった公共建築などの実践において、様々な人々の思いとからまり合う建築も生まれつつあります。
人間の精神は自らをとりまく環境と互いに映し合い影響し合います。生態系とからみ合う新しい社会は、建築や都市環境の新たな発展と共にあり、〈からまりしろ〉の建築はそのような発展に寄与するものと信じます。

講師プロフィール

経歴

1971年大阪府に生まれる。1997年京都大学大学院工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務の後、2005年平田晃久建築設計事務所を設立。現在、京都大学教授。
主な作品に「桝屋本店」(2006)、「Bloomberg Pavilion」(2011)、「太田市美術館・図書館」「Tree-ness House」(2017)、「八代市民俗伝統芸能伝承館」(2021)等。第19回JIA新人賞(2008)、第13回ベネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞(2012日本館での共働受賞)、村野藤吾賞(2018)等多数受賞。

著書

『Discovering New』(TOTO出版)、『JA108 Akihisa HIRATA 平田晃久2017→2003』(新建築社)等。また、バウハウス(ドイツ)、ハーバード大学(アメリカ合衆国)、Architecture Foundation(イギリス)等で講演。そのほか、東京、ロンドン、ベルギーなどで個展、MoMAにて”A Japanese Constellation”展(2016)を合同で開催。