人口減少社会のデザイン

拡大・成長から持続可能性へ

広井 良典 HIROI Yoshinori
こころの未来研究センター 教授

講義概要

日本は2011年から本格的な人口減少社会となり、現在の出生率が続けば日本の総人口は2050年過ぎには1億人を切り、さらに減少していくことが予測されています。これは人口や経済の規模が拡大を続けるという、明治以降100数十年にわたって続いてきた時代状況からの根本的な変化であり、「拡大・成長」を基調とする社会のあり方からの大きな発想の転換が求められています。まちづくりや地域再生、企業行動や経営のあり方、社会保障や世代間の配分、東京・地方や都市・農村を含む国土のビジョン等々はどのようなものであり、そこでの「豊かさ」は「価値」はどのように展望されるでしょうか。人類の歴史の中での人口減少社会や資本主義のゆくえといった大きな視点も含め、人口減少社会のデザインを幅広い角度から考えてみましょう。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

日本は文字通り世界の「フロントランナー」として、人口減少あるいは超高齢化社会を経験していくことになります。したがって、このテーマは令和時代の日本にとっての中心に位置する話題であるとともに、日本がどのようなビジョンを描き対応をしていくかは世界にとっても意味があると言えます。こうした問題意識も踏まえ、私たちの研究グループは、「2050年、日本は持続可能か」という問いを立て、日本社会が2050年に向けて持続可能であるためにはどのような対応が必要かという点を、最近関心が高まっているAIを活用して分析し、必要な政策を提言するなどしてきました。同時に、人口減少社会においては人々の意識や価値観、死生観等も大きく変容していくことが予想されます。未来に向けての日本社会の持続可能性にとって、人口減少社会をめぐる研究は最優先のテーマと考えられます。

講師プロフィール

経歴

1961年岡山市生まれ。1984年東京大学教養学部卒業(科学史・科学哲学専攻)、1986年同大学院修士課程修了後、厚生省勤務(1986-96年)をへて1996年より千葉大学法経学部助教授、2003年同教授。この間、2001-02年MIT客員研究員。2016年4月より現職。
専攻は公共政策及び科学哲学。「人間についての探求」と「社会に関する構想」を橋渡しすることが基本的な関心で、環境・福祉・経済が調和した「持続可能な福祉社会」を構想。社会保障、医療・福祉、都市・地域等に関する政策研究から、ケア、死生観等に関する哲学的考察まで幅広い活動を行っている。
この間、教育再生懇談会委員、国際協力機構(JICA)社会保障分野課題別支援委員会委員、内閣府・幸福度に関する研究会委員、横浜市・環境未来都市推進会議委員、厚生労働省・統合医療のあり方に関する検討会委員、国土交通省・国土審議会専門委員等多くの公職を務める。

著書

『日本の社会保障』岩波新書(1999年)でエコノミスト賞、『コミュニティを問いなおす』ちくま新書(2009年)で大仏次郎論壇賞受賞。他の著書に『ケアを問いなおす』ちくま新書(1997年)、『定常型社会 新しい「豊かさ」の構想』岩波新書(2001年)、『死生観を問いなおす』ちくま新書(2001年)、『ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来』岩波新書(2015年)、『人口減少社会のデザイン』東洋経済新報社(2019年)など多数。