においは薬になりますか

病院に頼り過ぎない上手な健康管理を考える

伊藤 美千穂 ITO Michiho
京都大学大学院薬学研究科 准教授

講義概要

 においは見えない、拡散するなど科学的取り扱いに難点がある上に、五感のひとつである嗅覚が記憶と強く結びついているということなど、サイエンスになりにくい要素を多く含んでいる。このため、においの薬理活性を動物実験等のいわゆる薬学的に汎用される方法で示すためにはいろいろと工夫が必要だった。他方、日本の法律では生薬の品質評価基準のひとつににおいを使う。漢方薬・生薬の世界では、においは医薬品の品質のものさしのひとつになるのである。
 扱い方によって大きく捉え方が変わるにおいに期待できること、またにおいのある医薬品としての漢方薬・生薬類を日本はどう扱ってきたのかなど、においを端緒に、身近でありながらあまり知られていない天然物医薬品の裏の世界を紹介する。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

 超高齢化社会に急速に変容していく日本では、介護を必要とする人口とそれに伴う医療費の急増、高止まりなどが予想され、健康自己管理、健康寿命の延伸の必要性などが強く言われるようになっている。セルフメディケーションとして品質保証がしっかりなされた一般用医薬品を上手に利用しつつ、より手に取りやすい天然物医薬品や健康食品などがさらに活用されることが期待される。においを利用する商品は雑貨の区分で扱われることが多く、手軽さに大きく利点がある反面、医薬品と異なり、品質保証・品質管理の面では注意を要する。ポイントを抑えつつ、医薬品のみならず、雑貨や食品などに分類されるものも上手に利用することで、より豊かで健康な日常が手に入るのではないだろうか。

講師プロフィール

経歴

1969年大阪生まれ。1988年神戸女学院高等学部卒業、京都大学薬学部入学、1992年同大学薬学部卒業、1994年同研究科修士課程薬学専攻修了、博士後期課程に進学、1996年同課程を中途退学、京都大学薬学部助手に採用される。1999年博士(薬学)の学位取得。2002〜3年米国ワシントン州立大学生物化学研究所に博士研究員として留学、2003年京都大学大学院薬学研究科助教授(2007年に准教授に名称変更)現在に至る。専門分野は生薬学・薬用植物学。特に、精油成分生合成研究、においの生薬薬理学的検討、薬用植物の栽培研究、生薬・天然物のレギュラトリーサイエンス、フィールドワークを軸とした伝統医薬の調査研究など。大学での教育研究の傍ら、厚生労働省薬事食品衛生審議会委員や医薬品医療機器総合機構日本薬局方原案審議委員会生薬等委員会委員、日本学術会議連携会員、また各種学会の理事、評議員、代議員等の活動も。研究のため、また国際学会やWHO、ISO等の国際会議出席のための出張が多く、途上国から先進国まで海外経験は豊富。2006年日本生薬学会学術奨励賞、2012年第37回漢方研究イスクラ奨励賞、2016年国際薬学連合Fellow award、2017年第29回日本東洋医学会奨励賞受賞。