日本の地下で何が起きているのか

地球科学で地震噴火の活動期を賢く生き抜く

鎌田 浩毅 KAMATA Hiroki
京都大学大学院人間・環境学研究科 教授

講義概要

近ごろ頻発する地震と噴火は、2011 年の東日本大震災が引き金となって地盤が不安定になったからだ。日本列島は1000 年ぶりの「大地変動の時代」に突入し、内陸の直下型地震と火山噴火が数10年ほど続き、西暦2030 年代には南海トラフ巨大地震、すなわち「西日本大震災」が迫る。富士山を初めとして20座の活火山が活動期に入ったことも喫緊の課題だ。

講義では最先端の研究成果に基づく地下の状況を、市民の目線で分かりやすく解説する。どうやって命を守るのか、いま何を準備すべきか、どのような社会を構築すべきか。私は京大に着任して今年で22年になるが、地球科学の基礎研究者から「科学の伝道師」にシフトした目的と経緯と方法論も熱く語りたい。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

地震と噴火を伝えるアウトリーチ(啓発・教育活動)では、必ず生じる「心の葛藤」がある。同僚学者の目が気になって「後ろ指をさされない」ように説明するからだが、こうした「守りの姿勢」で語った結果、市民には腑に落ちない解説となる。反対に、私が市民の目線で解説と提言を行うと、同業者から「ちょっと正確さに欠けるね」と冷ややかな反応が返ってくる。ここで私に「市民サイドに沿う不安はない」と言ったら嘘になる。しかし、「科学の伝道師」はこの不安に打ち勝って成り立つ仕事なのだ。伝えたいことは至ってシンプルで、自然の一部である人間は自然を到底コントロールできない。一方、知恵を絞れば災害を減らすことは可能で、ここに地球科学の出番がある。そもそも私が研究できるのは、社会へいずれ還元させていただくからではないか。地球科学の「知識」を人の命が助かる「行動」まで繋げるには新しい方法論が必要なのだが、いま私が格闘する最大のテーマである。

講師プロフィール

経歴

1955 年生まれ。筑波大学付属駒場高校卒業。東京大学理学部地学科卒業。通産省( 現・経済産業省)主任研究官・米国内務省カスケード火山観測所上級研究員を経て、1997年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。理学博士( 東京大学)。専門は地球科学・火山学・科学コミュニケーション。内閣府災害教訓継承分科会委員、気象庁活火山改訂委員、日本火山学会理事、日本火山学会誌「火山」編集長、日本地質学会火山部会長などを歴任。日本地質学会論文賞受賞(1996 年)、日本地質学会優秀講演賞受賞(2004 年)。テレビ・雑誌・新聞・著書で科学を明快に解説する「科学の伝道師」。京大の講義は毎年数百人を集める人気で教養科目1位の評価。「世界一受けたい授業」「情熱大陸」「ようこそ先輩 課外授業」「グレートネイチャー」などに出演。

著書

『成功術 時間の戦略』文春新書(2005 年)、『ラクして成果が上がる理系的仕事術』PHP 新書(2006 年)、『火山噴火』岩波新書(2007年)、『世界がわかる理系の名著』文春新書(2009 年)、『一生モノの勉強法』東洋経済新報社(2009 年)、『京大人気講義 生き抜くための地震学』ちくま新書(2013 年)、『西日本大震災に備えよ』PHP 新書(2015 年)、『火山はすごい』PHP 文庫(2015 年)、『地球の歴史、上中下』中公新書(2016 年)、『地学ノススメ』ブルーバックス(2017年)、『日本の地下で何が起きているのか』岩波科学ライブラリー(2017年)、『地球とは何か』サイエンス・アイ新書(2018 年)、『理科系の読書術』中公新書(2018 年)、『座右の古典』ちくま文庫(2018 年)、『読まずにすませる読書術』SB 新書(2019 年)など。共著に『一生モノの英語勉強法』祥伝社新書(2015 年)、『山極寿一×鎌田浩毅 ゴリラと学ぶ』ミネルヴァ書房(2018年)、『野田秀樹×鎌田浩毅 劇空間を生きる』ミネルヴァ書房(2018 年)など。