日本の地下で何が起きているのか

地球科学で地震噴火の活動期を賢く生き抜く

鎌田 浩毅 KAMATA Hiroki
京都大学レジリエンス実践ユニット 特任教授
京都大学 名誉教授

講義概要

近ごろ頻発する地震と噴火は、2011年の東日本大震災が引き金となって地盤が不安定になったからである。日本列島は1000年ぶりの「大地変動の時代」に突入し、内陸の直下型地震と火山噴火が数10年ほど続き、西暦2030年代には南海トラフ巨大地震が予想され、全人口の半数6000万人が被災する。東日本大震災の10倍以上の被害をもたらす、いわば「西日本大震災」に今から準備しなければならない。
さらに、富士山を初めとして20座の活火山が活動期に入ったことも懸念され、首都直下地震とともに我が国の喫緊の課題である。昨今、地球温暖化で気象災害が激化しているが、地球科学的には脱炭素の政策は大噴火のもたらす地球寒冷化でひっくり返る可能性もある。
講義では最先端の研究成果に基づく地下の状況を、市民の目線で分かりやすく解説する。どうやって命を守るのか、いま何を準備すべきか、どのような社会を構築すべきか、等々。
私は24年間の教授としての研究・教育活動を経て、2021年4月から京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授に着任した。地球科学の基礎研究者から「科学の伝道師」にシフトした目的と経緯と方法論も、熱く語りたい。

 

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

地震と噴火を伝えるアウトリーチ(啓発・教育活動)では、必ず生じる「心の葛藤」がある。同僚学者の目が気になって「後ろ指をさされない」ように説明するからだが、こうした「守りの姿勢」で語った結果、市民には腑に落ちない解説となる。反対に、私が市民の目線で解説と提言を行うと、同業者から「ちょっと正確さに欠けるね」と冷ややかな反応が返ってくる。ここで私に「市民サイドに沿う不安はない」と言ったら嘘になる。しかし、「科学の伝道師」はこの不安に打ち勝って成り立つ仕事なのだ。伝えたいことは至ってシンプルで、自然の一部である人間は自然を到底コントロールできない。一方、知恵を絞れば災害を減らすことは可能で、ここに地球科学の出番がある。
そもそも私が研究できるのは、社会へいずれ還元させていただくからではないか。地球科学の「知識」を人の命が助かる「行動」まで繋げるには新しい方法論が必要なのだが、いま私が格闘する最大のテーマでもある。「京大人気No.1教授」24年+名誉教授1年をフルスロットルした白熱 課外講義。

講師プロフィール

経歴

1955 年生まれ。筑波大学付属駒場高校卒業。東京大学理学部地学科卒業。通産省( 現・経済産業省)主任研究官・米国内務省カスケード火山観測所上級研究員を経て、1997年〜2021年に京都大学大学院人間・環境学研究科教授。理学博士( 東京大学)。専門は地球科学・火山学・科学コミュニケーション。内閣府災害教訓継承分科会委員、気象庁活火山改訂委員、日本火山学会理事、日本火山学会誌「火山」編集長、日本地質学会火山部会長などを歴任。日本地質学会論文賞受賞(1996 年)、日本地質学会優秀講演賞受賞(2004 年)。テレビ・雑誌・新聞・著書で科学を明快に解説する「科学の伝道師」。京大の講義は毎年数百人を集める人気で教養科目1位の評価を得てきた。「世界一受けたい授業」「情熱大陸」「ようこそ先輩 課外授業」「グレートネイチャー」などに出演。

著書

『成功術 時間の戦略』文春新書(2005 年)、『火山噴火』岩波新書(2007年)、『世界がわかる理系の名著』文春新書(2009 年)、『京大人気講義 生き抜くための地震学』ちくま新書(2013 年)、『火山はすごい』PHP 文庫(2015 年)、『地球の歴史、上中下』中公新書(2016 年)、『地学ノススメ』ブルーバックス(2017年)、『日本の地下で何が起きているのか』岩波科学ライブラリー(2017年)、『地球とは何か』サイエンス・アイ新書(2018 年)、『理科系の読書術』中公新書(2018 年)、『座右の古典』ちくま文庫(2018年)、『読まずにすませる読書術』SB 新書(2019 年)、『富士山噴火と南海トラフ』ブルーバックス(2019 年)、『新版 一生モノの勉強法』ちくま文庫(2020 年)、『理学博士の本棚』角川新書(2020 年)、『理系的アタマの使い方』PHP文庫(2021 年)、『100年無敵の勉強法』ちくまQブックス(2021 年)、『武器としての教養』MdN新書 (2022年)など。共著に『一生モノの英語勉強法』祥伝社新書(2015 年)、『山極寿一×鎌田浩毅 ゴリラと学ぶ』ミネルヴァ書房(2018 年)、『野田秀樹×鎌田浩毅 劇空間を生きる』ミネルヴァ書房(2018 年)など。