脳の暗号を解読する | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

脳の暗号を解読する

他者から見える世界を知ることができるか

神谷 之康 KAMITANI Yukiyasu
京都大学大学院情報学研究科 教授

講義概要

われわれは外界からの入力がなくても想起したり夢を見たりすることができます。見ている世界も、外界の単なるコピーではなく、主観に彩られています。脳は、外界を独特な仕方で内在化した世界のモデル(ニューロバース)を構築しており、脳信号はニューロバースをコード化している「暗号」とみなすことができます。私の研究室では,脳信号パターンから心の状態に関するさまざまな情報を解読(デコード)する方法を開発してきました。本講義では、ニューロバースの外在化・共有化という観点から脳情報解読研究を俯瞰し、脳科学が生み出す未来を展望したいと思います。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

インターネットやスマートフォンなど新たな情報通信技術が、多様なコミュニケーションを可能にしてきました。しかし、超えられていない壁があります。それは「身体」です。われわれが情報を発信するとき身体(筋肉)を動かす必要がありますが、筋肉とつながっている脳部位はごく一部です。その限られたチャンネルを通して、脳は世界とつながっているのです。しかし、脳情報解読技術は、そのボトルネックを超える脳と世界のブロードバンド通信を実現します。これによって、他人が経験している世界を可視化し、共有することができるようになるかもしれません。また、自分自身も意識していない・覚えていない情報を解読することにより、自己の深層を知る手がかりが得られるかもしれません。このような技術は、人間の文明や文化にどのような影響を与えるでしょうか。

講師プロフィール

経歴

奈良県生まれ。東京大学教養学部卒業。カリフォルニア工科大学でPh.D.取得後、ハーバード大学、プリンストン大学、ATR脳情報研究所を経て、2015年から現職。機械学習を用いて脳信号を解読する「ブレイン・デコーディング」法を開発し、ヒトの脳活動パターンから視覚イメージや夢を解読することに初めて成功した。SCIENTIFIC AMERICAN誌「科学技術に貢献した50人」(2005)、塚原仲晃賞(2013年)、日本学術振興会賞(2014年)、大阪科学賞(2015)等を受賞。2018年、ATRフェローの称号を授与される。サーペンタイン・ギャラリー(ロンドン)でのピエール・ユイグの展示 “UUmwelt”(2018年)のための映像を提供するなど、アーティストとのコラボレーションも進めている。

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