気体の科学と技術 | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

気体の科学と技術

新しい多孔性材料による「霞(水蒸気、空気)を食って生きる」未来を展望する

北川 進 KITAGAWA Susumu
京都大学高等研究院 特別教授
物質-細胞統合システム拠点 拠点長

講義概要

ナノサイズの空間を持つ物質は我々の周りに溢れており、貯蔵、分離、触媒など生活に密着する用途に用いられ多孔性材料として良く知られている。代表物質である活性炭は古代エジプトにおいて医療用に用いられたことがパピルスに記述されており、現在においても水の浄化など幅広く用いられている。人類がその活性炭を発見したのち3000 年を経て、18世紀に当時の新しい多孔性材料として天然鉱石から無機物であるゼオライトが発見され、20 世紀前半の人工合成の成功を経て、石油産業をはじめとして人類の産業に大きな進歩をもたらした。このように既存の多孔性材料は、人類の生活に不可欠のものとして長年にわたって利用されてきた。もし、活性炭やゼオライトが担ってきたナノ細孔による機能を凌駕するような、貯蔵、分離などの機能を有する、あるいはまったく新しい多孔性機能を有する材料が発見されれば、人類の生活に革新的な変化をもたらす事が期待される。この革新的材料を生み出す空間の化学を紹介し、身の回りの気体がかかわる現代の課題(地球環境、エネルギー、医療、健康)への挑戦について述べてみたい。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

炭素資源およびエネルギー資源として重宝してきた石炭、石油や天然ガスはいずれ尽きる。地下資源代替として、ユビキタスな物質の利用(例えば空気や河川、海の水)が究極である。実現すれば日本はもはや資源のない国とは言わないであろう。そのためには気体を自在に操作する科学の創成、その技術の発展が不可欠である。東洋では、「仙人は霞(水蒸気、空気)を食って生きる」と言われる。まさに空気、水を原料として身の回りのものができる未来、私たちが仙人となることはあながち空想ではないように思える。

講師プロフィール

経歴

1974 年京都大学工学部卒業、1976 年京都大学大学院工学研究科修士課程修了、1979 年京都大学大学院工学研究科博士課程修了。1988 〜1992年近畿大学理工学部助教授、1992 〜1998 年東京都立大学理学部教授、1998 〜2017年京都大学大学院工学研究科教授、2007 〜2012年京都大学物質-細胞統合システム拠点副拠点長・教授、2013 〜2016 年京都大学物質-細胞統合システム拠点拠点長・教授、2016 ~ 2018 年 京都大学高等研究院副院長、2016 年より京都大学 高等研究院物質-細胞統合システム拠点拠点長、2017年より京都大学高等研究院特別教授。
2009 年日本化学会賞、2010 年トムソン・ロイター引用栄誉賞、2011年紫綬褒章、2013 年京都大学孜孜賞、2013 年英国王立化学会フェロー会員、2013 年江崎玲於奈賞、2016 年日本学士院賞、2016 年米国化学会バソロ賞、2017年藤原賞、2017年ソルベイ未来化学賞、2018 年 Grand Prix of the Fondation de la Maison de la Chimie など多数受賞。2019年学士院会員。
新規多孔性材料であるMOF 研究の先駆者であり、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の吸着など広範な未来用途に用いられる可能性がある新規材料、多孔性配位高分子(PCP)(または有機-金属構造体(MOF))を開発した。

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