サステイナビリティ学

持続可能なエネルギーシステムとは何か

小西 哲之 KONISHI Satoshi
京都大学エネルギー理工学研究所 教授

講義概要

エネルギーとは何か。本講義では、資源、環境、社会、人間活動と、その持続可能な発展との関係・メカニズムを、エネルギーのサプライチェーンと、影響経路から多角的、総合的に考察する。いくつかの主要な、および将来に期待されるエネルギー技術について、資源、インフラから廃棄物、環境社会影響までを広い視野から分析する。すると、化石資源、再生可能エネルギー、原子力などについて、簡単な考察により、従来エネルギー問題と言われていたものの矛盾、誤解が見えてくる。
さらに、受講者は自ら公的に得られる統計データの分析と、それに基づくディスカッションを通じて、社会の駆動力としてのエネルギーと社会、先進国と途上国の関係、地球環境問題などについて、統一的客観的な全体像が得られるようになる。それが講義の目的であり、受講者は思い込みによるエネルギー環境問題の誤解に大きな転換を迫られるであろう。受講に当たっては、予備知識や複雑な数式等は不要であるが、健全で先入観にとらわれない論理的思考が求められる。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

この研究は、エネルギー問題の恒久的かつ本質的な解決策を各界のリーダーたる受講者各自が見出すことで、世界と人類の未来を漸進的に変えることを意図している。本講義では、エネルギー問題の本質が、資源や環境にではなく、エネルギーを使うシステムや、サプライチェーンのインフラを整備する社会、さらには新たなエネルギー技術を開発する、その意思決定そのものにあることを実例の分析から学ぶ。したがって、この講義で示した研究を理解し、実践する能力を持った人材は、それぞれがステークホルダーとして、エネルギー問題を通じて人類の持続可能性に有意な変化をもたらすことができる。しかしいかなる新しいエネルギー技術も、人類の繁栄と、一方ではその経済活動の拡大と更なる消費とそれによる影響増大を引き起こす。つまり「持続可能な開発」は本質的矛盾をはらんでいる。根拠のないイノベーション待望論や現状技術の単純外挿では人類社会の生存と発展に具体的な解は得られない。エネルギー問題についての意識の転換のみが、破滅から人類を救う可能性を持つ。
地球上のエネルギー収支と物質循環の中で持続可能(サステイナブル)なシステムを構築した生物種だけが、安定な生態系を多数世代にわたり準安定に維持してきた。人類だけはまだ生存権を確立していないといえる。先進国と途上国、現世代から未来世代、時間と空間の広がりの中で、エネルギーの正と負の影響を分析することで、複雑とみえるエネルギー環境問題を解く方法論を提示する、それが本講義の意図するインパクトである。

講師プロフィール

経歴

1979年東京大学工学部卒、1981年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。東京大学博士(工学)。1981年日本原子力研究所に入所。同研究所主任研究員及び室長を経て、2003年より京都大学エネルギー理工学研究所教授。2008〜2012年京都大学生存基盤科学研究ユニット長併任。核融合炉工学、炉設計研究に従事し、国際熱核融合実験炉(ITER)理事会のテストブランケット計画委員会(TMB-PC)議長(2009~2012)及び委員。原子力学会理事。エネルギーシステム評価、サステイナビリティ学。核融合、先進原子力、等のエネルギーシステムの工学と、一方では安全性や環境、社会や経済への影響を評価する研究、さらには地球環境問題や人類の持続可能な発展を考える学際領域「サステイナビリティ学」の研究に従事している。JSPS日韓、日中韓協力研究・協力事業コーディネーターとして国際協力活動を推進している。