現代イスラーム世界と国際社会

イスラーム政治・経済の今日的相貌

小杉 泰 KOSUGI Yasushi
立命館大学アジア・日本研究所 所長・教授
京都大学 名誉教授

講義概要

イスラーム世界は、21世紀に入ってから国際社会の中で急速に存在感を増してきた。その中には、9・11事件(米国同時多発テロ事件)から昨今の「イスラーム国」に至る過激派の問題もあれば、無利子金融を標榜するイスラーム銀行や、イスラーム圏からの観光客増大で注目を集めているハラール食品のような独自の経済活動も含まれる。いずれの面も、日本文化や近代文明の視点から見ると理解しがたい要素を多く含んでいる。
本講義では、まずイスラームと現代イスラーム世界を概観した上で、イスラーム経済、ハラール食品産業を例にとって、イスラームの固有の発想法を検討し、次に、アルカイダ、「イスラーム国」、イラクやシリアの紛争などを例にとって、なぜ、イスラームと西洋が摩擦を起こすのかについて検討して、硬軟両方の面から現代イスラームを考察し、さらにイスラーム世界と国際社会、日本が今後どのような関係を結ぶことができるかについても議論したい。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

イスラーム世界は、国連加盟国の3分の1を占め、G20にも3カ国が加わっている。人口で見ても、現在の世界人口のほぼ4分の1となり、今世紀半ばには3分の1に達すると推計される。これらを鑑みれば、イスラームをいつまでも理解しがたい異文化としておくことはできないであろう。その意味で、イスラーム理解は異文化コミュニケーションの最大級の課題となっている。
さらに、経済面で見ても、イスラーム金融はすでに2兆ドルに達し、ハラール食品市場も急速に拡大している。しきりにニュースとなる過激派などの現象も把握する必要があるが、同時に、草の根レベルでのイスラーム復興や、それがもたらす現代イスラームの新しい展開に目を向け、それらのポジティブな面に向き合い、必要ならばそれらを取り込むことが望まれる。真のグローバル化に対応するためには、イスラームを含めたアジア・アフリカの理解が不可欠なのではないだろうか。

講師プロフィール

経歴

1953 年北海道夕張市生まれ。1983 年エジプト国立アズハル大学イスラーム学部卒業。1999 年京都大学法学博士。2012 年マレーシア国民大学名誉博士( イスラーム文明学)。1984 年国際大学大学院国際関係学研究科助手、1985 年国際大学中東研究所主任研究員・主幹、1989 年国際大学大学院国際関係学研究科助教授、1997年同教授、1998 年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授、2006 年~ 2014 年研究科附属イスラーム地域研究センター長、2008 年~ 2010 年京都大学評議員・副研究科長、2014 年~ 2016 年研究科長。現在、立命館大学アジア・日本研究所所長・教授、京都大学名誉教授。ケンブリッジ大学中東研究センター客員研究員、日本学術会議会員、日本中東学会会長、アジア中東学会連合会長、日本比較政治学会理事などを歴任。専門はイスラーム学、中東地域研究、比較政治学、国際関係学、比較文明学。1994 年度サントリー学芸賞、2005 年度大同生命地域研究奨励賞、2012 年紫綬褒章、2013 年京都大学孜孜賞。

著書

『イスラームとは何か ― その宗教・社会・文化』講談社新書(1994年)、『現代中東とイスラーム政治』昭和堂(1994年)、『ムハンマド ― イスラームの源流をたずねて』山川出版社(2002年)、『イスラーム帝国のジハード』講談社(2006年)、『「クルアーン」 ― 語りかけるイスラーム』岩波書店(2009年)、『イスラームを読む―クルアーンと生きるムスリムたち』大修館(2016年)、共著に『イスラーム銀行 ― 金融と世界経済』山川出版社(2010年)、共編著に『岩波イスラーム辞典』岩波書店(2002年)、『イスラーム研究マニュアル』名古屋大学出版会(2008年)、『イスラーム 書物の歴史』名古屋大学出版会(2014年)、ほか著書・編著多数。