現代イスラームと国際社会・日本のいま

異文化コミュニケーション最大の難問としての「イスラーム」

小杉 泰 KOSUGI Yasushi
立命館大学アジア・日本研究所 所長・教授
京都大学 名誉教授

講義概要

イスラーム世界は、21世紀に入ってから国際社会の中で急速に存在感を増した。一方には、イスラーム過激派の問題や中東での地域紛争などの政治問題があるが、他方には独自の経済活動があり、イスラーム銀行が無利子金融を標榜したり、ハラール食品がイスラーム圏からの観光客増大で注目を集めたりもする。いずれも、日本文化や近代文明の視点から見ると理解しがたい要素を多く含み、異文化コミュニケーションの最大の難問となっている。
本講義では、イスラーム経済、ハラール食品産業などを例にとって、イスラームの固有の発想法を概観し、次に、なぜ現代宗教として大きな力を持っているのかをイスラーム法の仕組みから検討して、さらにイスラーム世界の将来や、国際社会・日本との関係についても議論したい。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

イスラーム世界は、国連加盟国の3分の1を占め、G20にも3カ国が加わっている。人口で見ても、現在の世界人口の4分の1に達し、今世紀半ばには3分の1になると推計される。そう考えると、イスラーム世界の政治・経済的重要性を理解し、その文化・社会を把握することが肝要となる。
独自な発想に基づくイスラーム金融は3兆ドルに近づいており、ハラール食品市場も急速に拡大している。しきりにニュースとなる過激派などの現象にも注目するにしても、それ以上に草の根レベルでのイスラーム復興や現代イスラームの新しい展開に目を向け、それらのポジティブな面に向き合っていくことが望まれる。真のグローバル化に対応するためには、イスラームを含めたアジア・アフリカの理解が不可欠なのではないだろうか。

講師プロフィール

経歴

1953年北海道夕張市生まれ。1983年エジプト国立アズハル大学イスラーム学部卒業。1999年京都大学法学博士。2012年マレーシア国民大学名誉博士(イスラーム文明学)。1984年国際大学大学院国際関係学研究科助手、1985年国際大学中東研究所主任研究員・主幹、1989年国際大学大学院国際関係学研究科助教授、1997年同教授、1998年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授、2006~2014年研究科附属イスラーム地域研究センター長、2008~2010年京都大学評議員・副研究科長、2014~16年研究科長。現在、立命館大学アジア・日本研究所所長・教授、京都大学名誉教授。ケンブリッジ大学中東研究センター客員研究員、日本学術会議会員、日本中東学会会長、アジア中東学会連合会長、日本比較政治学会理事などを歴任。専門はイスラーム学、中東地域研究、比較政治学、国際関係学、比較文明学。1994年度サントリー学芸賞、2005年度大同生命地域研究奨励賞、2012年紫綬褒章、2013年京都大学孜孜賞。

著書

『イスラームとは何か―その宗教・社会・文化』講談社新書(1994年)、『現代中東とイスラーム政治』昭和堂(1994年)、『ムハンマド―イスラームの源流をたずねて』山川出版社(2002年)、
『イスラーム帝国のジハード』講談社(2006年)、『クルアーン― 語りかけるイスラーム』岩波書店(2009年)、『9・11以後のイスラーム政治』岩波書店(2014年)、共著に『イスラーム銀行―金融と世界経済』山川出版社(2010年)、共編著に『岩波イスラーム辞典』岩波書店(2002年)、『イスラーム世界研究マニュアル』名古屋大学出版会(2008年)、『イスラーム 書物の歴史』名古屋大学出版会(2014年)、編訳書に『ムハンマドのことば:ハディース』岩波文庫(2019年)、ほか著編著多数。