飽和の時代から循環型未来地域社会へのシナリオ設計

地域資源ベースの生産活動を考える

前 一廣 MAE Kazuhiro
京都大学大学院工学研究科 教授

講義概要

1講時目は、現在の世界、日本が抱える社会的問題を概観し、工業化社会の現状と今後を物質の視点から眺め、飽和の時代に突入していることを定量的に整理する。次に、この飽和の時代に求められるコンセプト、すなわち循環型社会形成に必要な要素である、省エネ、自然エネルギー利用、マテリアル高度循環に関して、そのポテンシャルと定着の可能性に関して考察する。
2講時目は、上述の講義内容に基づき、バイオマス資源を軸にして地域社会活性化に展開の可能性を考える。まず、バイオマス利用を概観し、その中で、付加価値製品製造を目的とした製紙業/化学産業との連携の国家プロジェクトを紹介する。次に、地域産業化の資源として利用していくためのシナリオ設計のためのツール開発の試みを紹介し、将来の1次/2次融合型地域産業の絵姿を考察する。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

日本の将来の社会構造は、できれば全国万遍なく自然エネルギー60%で地域資源利用による地域GDPがある一定以上の地域社会群をベースに、輸入エネルギー40%でグローバルに展開し外貨を獲得していく二重構造が必要と考えている。これを軸にした社会は、必然的に人口密度に上限をもった地域分散型社会ベースとなるが、現状は1次産業が地域に取り残され、化学産業は大型かつ集約型で地域と乖離している。
上述のシナリオ策定研究は1次産業から排出されるバイオマスという地域資源を積極的かつ合理的に変換して海外市場へ展開すると同時に、化学産業の未利用低レベル廃熱を1次産業のエネルギーとして利用していくスキームを提示するもので、飽和の時代における循環型社会へのパラダイムシフトを考えていく足掛かりとなる。

講師プロフィール

経歴

1980年京都大学工学部化学工学科卒業。1982年京都大学大学院工学研究科修士課程化学工学専攻修了、博士(工学)京都大学。1982年㈱神戸製鋼所化学研究所研究員。1986年京都大学工学部助手。1994年京都大学工学研究科助教授。2001年京都大学工学研究科教授で現在に至る。この間、1997年米国ペンシルバニア大にて文部科学省在外研究員、2006~2011年京都大学地球環境学堂教授(両任)、2008~2010年に京都大学教育研究評議員、地球環境学堂副学堂長。所属学会は、化学工学会、日本エネルギー学会、触媒学会、近畿化学協会、米国化学工学会、米国化学会で、2014、2015年度は化学工学会会長に着任。現在、資源・エネルギー・環境に係る新規高効率転換法、マイクロリアクターによる化学生産革新に関する研究に従事。日本エネルギー学会論文賞3回(1992年、2002年、2006年)、日本エネルギー学会進歩賞(1994年)、化学工学会研究賞(2008年)、日本エネルギー学会学会賞(2014年)受賞。