潜水目視調査から考える海の未来

多様性とつながり

益田 玲爾 MASUDA Reiji
京都大学フィールド科学教育研究センター 舞鶴水産実験所 教授

講義概要

京都府北部の舞鶴湾で、毎月2回の潜水調査を2002年から継続している。海の中にも四季折々の変化があるとともに、温暖化の傾向も見てとれる。加えて、高浜原子力発電所に近い福井県の高浜町音海(おとみ)では、2004年から継続して潜水し、原発の稼働中は冬にも南方種の優占する様子を観察してきた。原発の抱える問題について考えさせられるとともに、温暖化の進んだ50年先の日本海の一つの姿を見た気がした。さらに、気仙沼市舞根湾では、2011年5月から継続して潜水している。津波後に回復してきた海の生物たちには、生態系の持つ強靭さを教わった。海の中には多様な生物が生息しており、これらがどのようにつながっているかを理解することが、管理と保全の要と考えている。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

人類は有史以前から海の恵みに大きく依存してきた。この先の人類の歩みにも、海洋のもたらす恩恵は不可欠であろう。海を直接観察して得られる知見は、海が持つ生産性を理解し、これを適切に管理する上での示唆を与えてくれる。海洋生物資源の管理は、我々はどのように魚を食すべきか、という問題でもある。そこで、魚の食べ方について提案することで、生物資源の利用を、自分の周りから変えたいと思っている。一方で、潜水で得られた着想をもとに、海の生物を飼育して観察し、行動のからくりをさぐる「魚類心理学」的な研究も進めている。魚類の行動観察で得られた知見には、ヒトの行動理解に通じるものもあるかもしれない。

講師プロフィール

経歴

1965年横浜市に生まれ、以後首都圏・関西・名古屋の大都市圏を2年ごとに転居。1985年、静岡大学理学部生物学科に入学。ダイビング部に入り、海の生物について幅広く学ぶが、これが過ぎて留年。1990年東京大学農学系研究科に進学し、海洋研究所にて塚本勝巳教授の指導を受け、シマアジの群れ行動について研究。1996年から2年間、日本学術振興会海外特別研究員としてスコットランドのダンスタッフネージュ海洋研究所に留学し、ニシンの行動について研究。1998年ハワイのオーシャニック・インスティテュートに研究員として就職。魚類の行動研究を栽培漁業に応用する過程で、魚類の学習能力を調べる実験に着手。2000年4月京都大学水産実験所に助手として着任。2003年助教授、2014年舞鶴水産実験所長、2020年教授。趣味は、ダイビング、ランニング、テニス、料理、ピアノ。舞鶴水産実験所には、保育園児や小学生からシニアまで、幅広い年齢層の方が訪れるため、それぞれに対し、潜って見てきた魚の話や魚の食べ方の話をしている。