生存学

未来社会はどうあるべきか

松本 紘 MATSUMOTO Hiroshi
国立研究開発法人理化学研究所理事長
前京都大学総長
京都大学名誉教授

講義概要

山中伸弥教授がiPS細胞の研究でノーベル医学・生理学賞を受賞されました。これは山中先生がこれまでの常識から一歩踏み出し、いまだ科学として成立していなかった「未科学」の分野を「科学」にしようと挑戦された結果です。
20世紀初頭「夢」と思われていた技術の多くは現代社会において実現されています。しかしその反面、科学技術が進歩した現在において、環境問題、資源・エネルギー問題をはじめ、さまざまな問題が地球規模の課題として我々の目前にせまり、地球文明の危機に直面しています。この21世紀の100年間を、現代文明の維持発展、そして「人類の生存」のために科学技術をいかに使い発展させるのか、国際社会の中で人間が果たすべき役割と科学技術のあり方、研究の進め方について考えます。その例として、あるべき社会像を先に描き、その実現のためにおこなう科学技術研究を紹介し、これからの日本、世界の社会がどうあるべきかを一緒に考えたいと思います。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

国際連合では「サステイナブル・デベロップメント・ゴール(SDGs)」を設定しています。しかし、より厳しいSurvival(生存)のための科学が、この先では求められるようになるでしょう。生存に関わる科学が真に求められる時から研究を開始しては手遅れです。その時の社会では、科学にどれだけ投資できる余力があるでしょうか。
1999年「社会のための科学」ということが提唱されました。しかし、研究者は少し先の社会に役立つもので、今の社会を支える人にはなりません。穀物を作り、都市へ運び、提供してくれる多くの人や社会に依存した存在です。その中でも自分が研究することが社会に役立つという心構えを持ってほしいと思っています。

講師プロフィール

経歴

1965年京都大学電子工学科卒、工学博士。1974年4月京都大学工学部助教授、1975年9月NASAエームズ研究所客員研究員、1980年7月スタンフォード大学客員研究員、1992年4月京都大学超高層電波研究センター長、2002年4月京都大学宙空電波科学研究センター長、京都大学評議員、2004年4月京都大学生存圏研究所長、京都大学教育研究評議員、2005年10月京都大学理事・副学長、2007年京都大学名誉教授、2008年10月京都大学総長(~2014年9月)などを経て、2015年4月理化学研究所理事長。
1975年5月日本地球電磁気・地球惑星学会 田中館賞、1993年3月NASA Group Achievement Award(GEOTAIL)、1998年6月NASA Group Achievement Award(GEOTAIL)、1999年6月情報通信月間推進協議会志田林三郎賞、2004年5月英国王立天文学協会(RAS)外国人名誉会員(RASアソシエイト)、2006年3月ロシアFederation of Cosmonautics ガガーリンMedal、2006年4月文部科学大臣表彰科学技術賞、2007年11月紫綬褒章、2008年8月国際電波科学連合 Booker Gold Medal、2008年10月地球電磁気・地球惑星圏学会 長谷川・永田賞、2014年1月ブリストル大学 名誉工学博士、2015年12月フランス政府 レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ、2017年2月大英帝国勲章OBE。

著書

主な著編書に『宇宙開拓とコンピュータ』共立出版(1996年)、SPS白書(URSI)、『京の宇宙学』ナノオプトメディア (2009年)、『宇宙太陽光発電所』ディスカヴァー・トゥエンティワン(2011年)、『京都から大学を変える』祥伝社新書(2014年)、『改革は実行 ~私の履歴書~』日本経済新聞社 (2016年)。