グローバルな脅威としての感染症の科学

新興・再興感染症を微生物学・免疫学・社会学的に考える

光山 正雄 MITSUYAMA Masao
京都大学 名誉教授

講義概要

この1世紀あまりの間に、医学は理論的にも技術的にも飛躍的に発展し、多くの診断法、治療法、予防法が開発されてきました。にも関わらず、多くの疾患が今なお人類を苦しめ、人々の健康な生活が脅かされ続けています。ガンや成人病は現代人が最も恐れる疾患ですが、実は大昔から人間を苦しめてきた感染症は今だに地球規模では最も重大な疾患であり、新たに勃興する新興感染症は予測が困難で、将来的に致命的な重大感染症が国境を越えて蔓延する危険性は誰も除外することはできません。この講義では、現代の感染症はどのような状況にあり、近代医学がもたらした抗菌薬や予防接種ワクチンがありながら、何故感染症を撲滅できないのか、微生物側はどのような進化を遂げて医学的対応を避けて生存し続けるのか、などについてわかりやすく解説したいと思います。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

多くの病気のなかでも太古から存在し、時として人類を滅亡の危機に晒す程の脅威を示した古典的伝染病は一見なくなったように見えますが、発展途上国も含めてグローバルに見れば、人類への重大感染症の脅威は決して過去のものではないことを再認識することは重要です。昔はなかったはずの多様な感染症が近年新興感染症として地球上に出現した背景には、病原微生物側の遺伝子変異によるしたたかな生き残り戦略がみられ、それに対して我々人類の感染防御機能には何ら進化はみられません。また地球上の狭い地域に発生した感染症が時として一気に拡大伝搬する背景には、森林原野開拓、物流や交通の大量化・グローバル化といった人的要因が大きく存在します。これらを正しく理解して将来を含めた現状を把握することは、専門外の方にとっても不可欠の素養となるものと思います。

講師プロフィール

経歴

1973年九州大学医学部卒業、医師免許取得。3年間の内科臨床経験の後、九州大学医学部細菌学教室にて病原細菌学の研究を開始し、1978年同教室助手、医学博士号取得。1980年同講師。1981年から1983年まで米国政府給付国際奨励研究員(Fogarty fellow)としてハーバード大学医学部に留学し感染免疫学の研究に従事。1983年帰国後九州大学医学部細菌学助教授。1987年新潟大学医学部細菌学講座教授。1998年京都大学大学院医学研究科感染・免疫学講座微生物感染症学分野教授。2008年~2010年京都大学医学研究科長・医学部長。2013年3月定年退職。2013年4月より総合生存学館特定教授。2014年3月総合生存学館副学館長。現在は、京都大学名誉教授。2015年4月より、京都大学白眉センター・センター長および京都大学次世代研究創成ユニット・ユニット長を兼任。細胞内寄生性細菌の病原因子の分子微生物学、感染防御免疫学を専門研究領域とし、思修館ではグローバル感染症学・生体防御学を担当。日本細菌学会、日本免疫学会、日本生体防御学会各役員、日本感染症学会、日本結核病学会会員。米国微生物学会、欧州微生物学連盟正会員、日米医学研究協力計画パネルメンバー、日本学術会議連携会員。1999年小島三郎記念文化賞受賞。2009年浅川賞(日本細菌学会最高学術賞)受賞。

著書

専門領域での著書・英文原著論文多数。