熱帯地域における農業環境の維持と食料生産

在来農法の限界と変容 - 東南アジアの焼畑

縄田 栄治 NAWATA Eiji
京都大学大学院農学研究科 教授

講義概要

環境保全と農業生産は、両立しないことが多く、特に熱帯地域では、その対立が厳しいことが多い。なぜなら、熱帯地域においては、近年、急速に人口増加と経済発展が進み、食料を中心とした農産品の需要が急増しているからである。農業生産を増加させるには、農地面積の拡大と、単位面積当たりの生産性の向上の二つの方法があるが、いずれの方法を採るにせよ、環境負荷の拡大は避けえない。熱帯地域で持続的に行われてきた在来農法も、急速な人口増に対応できず、その成立基盤が崩壊しつつあり、新たな展開が求められている。本講義では、東南アジア大陸部山地部の焼畑を事例として取り上げ、熱帯における環境保全と農業生産の両立について考える。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

熱帯地域は、地球環境問題にとっても、将来の食料生産にとっても、鍵を握ると言われている。熱帯地域は、高気温・強日射・高生物多様性により、農業潜在力は大きいが、現在、必ずしも、そのポテンシャルが生かされていない。一方、熱帯地域では、人口が急増し、目覚ましい経済発展をとげている地域も多く、それなりに持続的環境調和的であった在来農業の成立基盤が急速に崩壊しつつあり、農業システムが急速に変容しつつある。本研究では、このような状況下で、変容を遂げつつある、熱帯の代表的な在来農業システムの一つである焼畑を評価し、今後の環境保全と両立する農業システムについて提言を行う。

講師プロフィール

経歴

1977年京都大学農学部農学科卒業。1979年京都大学農学研究科農学専攻修士課程修了、農学博士 (京都大学)。1981年京都大学農学部助手として採用される。1983年から1984年JICA派遣専門家として、タイKasetsart大学に滞在。1992年京都大学農学部助教授、1997年京都大学大学院農学研究科助教授、2007年同教授。2011年より、京都大学大学院総合生存学館教授兼務。熱帯農学・環境農学を専門とし、東南アジア大陸部を中心に、海外調査を多数実施する。

著書

『生物資源から考える21世紀の農学 第1巻 作物生産の未来を拓く』(共著)京都大学学術出版会(2008年)、『論集 モンスーンアジアの生態史 第2巻 地域の生態史』(共著)弘文堂(2008年)、『ドメスティケーション -その民族生物学的研究-』(共著)国立民族学博物館(2009年)、”A review of studies on swidden agriculture in Japan: cropping system and disappearing process”(共著)Tropics(2014年)など。