西洋史学、近世・近代のヨーロッパ史 | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

西洋史学、近世・近代のヨーロッパ史

ポーランドからみる歴史の地下水脈

小山 哲 KOYAMA Satoshi
京都大学文学研究科 教授

講義概要

日本では、明治期に歴史学が近代的な学問として成立して以降、世界史を「東洋史学」と「西洋史学」に二分したうえで、後者の枠組みのなかでヨーロッパやアメリカの歴史をとり扱ってきた。そこでの「西洋史学」の課題は日本にとって「近代化」のモデルとなりうる諸国の歴史を研究し教育することにあり、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、アメリカといった大国の歴史が中心になりがちであった。しかし、このようなヨーロッパ史のとらえ方は、EUによる統合が進んだ結果、ポルトガルからポーランドまで国境の検問なしに移動できる現在のヨーロッパの状況を歴史的に理解するためには十分なものとはいえない。
この講義では、18世紀後半の領土分割によって国家を失い、近代ヨーロッパのいわば「敗者」となったポーランドの歴史に目を向けることで、ヨーロッパ史の隠されたもう1つの地下水脈の存在に光をあててみたい。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

歴史学は、人間の営みのあり方とその変化を時間の推移のなかで研究する学問である。そこで扱われる時間の長さは研究する対象によってさまざまだが、どんなに短期間の変化を論じる場合でも少なくとも数十年から数百年の時間の幅を念頭において考えることが必要である。市場における日々の数字の変動を業績評価の基準とする今日の感覚からすると、歴史学はその意味では「反時代的」な学問であるかもしれない。しかし、人間の営みのなかには、数百年が経過してはじめてそのほんとうの意義が正当に評価されるものもある。 この講義でとりあげる「ワルシャワ連盟協約」は、そのような事例の1つである。1573年に成立したこの協定は、430年後の2003年にユネスコの「世界記録遺産」に登録された。従来とは異なる角度から光をあてることによって忘れられていた人類の重要な遺産の存在を浮かび上がらせることも、歴史研究の役割の1つであろう。

講師プロフィール

経歴

1983年京都大学文学部史学科卒業。1989年京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。1989年京都大学文学部助手。1990年島根大学法文学部講師。1991年島根大学法文学部助教授。1993年ワルシャワ大学新言語学部講師。1995年京都大学人文科学研究所助教授。2001年京都大学大学院文学研究科助教授。2006年京都大学大学院文学研究科教授。

著書

『大学で学ぶ西洋史[近現代]』ミネルヴァ書房(2011年 小山哲・上垣豊・山田史郎・杉本淑彦編著)、『ワルシャワ連盟協約(一五七三年)』東洋書店(2013年 小山哲)他

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