なぜ西洋音楽は、世界標準になれたのか?

“クラシック”の歴史と思想を解き明かす

三枝 成彰 SAEGUSA Shigeaki
作曲家 
東京音楽大学 客員教授

講義概要

なぜ、モーツァルトやベートーヴェンの音楽は世界中にファンがいるのだろうか? クラシック音楽はもともと、ヨーロッパのごく一部の人たちが作り出したたいへん特殊な音楽であるといえる。それなのに、インド人も、アフリカ人も、中国人も、日本人も、それを愛好するのには理由がある。私たちが耳にするロックやポップス、そして歌謡曲も、西洋音楽が生み出したハーモニー(コード進行)と、アフリカ発祥の連続性を持ったリズムから誕生したハイブリッドな音楽である。それに日本の情緒を乗せれば演歌やJ-POPになり、韓国の情緒を載せればK-POPになる。かつてはそれが北米に上ってジャズになり、南に下ってタンゴになった。クラシック音楽の成り立ちを知ることは、すなわち西洋の人たちのものの考え方を知ることでもある。
いまや西洋文化が生み出したさまざまな文物が、世界中に浸透している。それはひとえに科学と合理性に裏打ちされたものだからである。どの国の人たちも洋服を着て、コンクリートの家に住み、パソコンを使い、テレビを見たり車に乗ったりするのも、そこに由来する。日本でも日常的に着物を着る人がほとんどいなくなったのが、その証左である。
この講義では、いくつかのキーワードから、西洋音楽が“世界標準”になってゆく歴史を学び、それをとおして、西洋文化がなぜここまで世界に広がっていったのかを考えてゆく。

講師プロフィール

経歴

1942年生まれ。東京芸術大学卒業、同大学院修了。代表作として、オラトリオ「ヤマトタケル」、オペラ「千の記憶の物語」等、映画音楽に「優駿」「お引越し」「機動戦士ガンダム~逆襲のシャア~」「機動戦士Zガンダム」、テレビ番組の音楽に、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」等、多数。国際財団モーツァルテウムの依頼で、モーツァルトの未完曲に補筆・完成したことも話題となった。
1997年には構想に10年近くをかけたオペラ「忠臣蔵」を完成・初演。この作品のCD・ビデオは、邦人作曲家のオペラ作品として初めて、全世界27カ国で発売されている。2004年、プッチーニの「蝶々夫人」を下敷きとした新作オペラ「Jr.バタフライ」を初演(2005年神戸で再演)。このオペラは2006年、イタリアのプッチーニ音楽祭でも再演され、同音楽祭における初の外国人作品の上演であり、プッチーニ以外の作品としても初の上演となった。
2007年、紫綬褒章受章。2008年、モノオペラ「悲嘆」、ピアノ協奏曲「イカの哲学」を世界初演したほか、日本人初となるプッチーニ国際賞を受賞。2010年、オペラ「忠臣蔵」外伝、男声合唱と管弦楽のための「最後の手紙 The Last Message」を世界初演。2011年、渡辺晋賞受賞。2013年、オペラ「KAMIKAZE ―神風―」を世界初演。2014年、プッチーニ音楽祭にて、主要キャストにイタリア人声楽家を起用した「Jr.バタフライ」イタリア語版を世界初演。同作品は、2016年1月23日に富山、27日に東京で日本初演された。
現在、東京音楽大学客員教授、日本交響楽振興財団理事、日本現代音楽協会理事、日本作編曲家協会副会長、日本モーツァルト協会理事長。

著書

「知ったかぶり音楽論」(朝日新聞社)、「三枝成彰のオペラの楽しみ方」(講談社)、「譜面書きの遠吠え」(廣済堂出版)、「大作曲家たちの履歴書」(中央公論新社)、「三枝成彰オペラに討ち入る」(WAC出版)「驚天動地のクラシック」(キノブックス)他多数。