自己と非自己の免疫学 | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

自己と非自己の免疫学

新しい免疫医療に向けて

坂口 志文 SAKAGUCHI Shimon
京都大学名誉教授 大阪大学名誉教授
京都大学ウイルス再生医科学研究所客員教授
大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授

講義概要

免疫系は、私たちの身体を病原微生物から守りますが、身体を作っている正常な細胞、分子とは反応しません。では、免疫系は、自己と非自己をどのように区別しているのでしょうか。この“免疫的自己・非自己”を区別する仕組みが分かれば、自己免疫病やアレルギーの理解が進み、治療・予防が可能になります。また、自己から発生した“自己もどき”である癌細胞に対して強い免疫反応を起こすことが可能となり、移植臓器をあたかも自己臓器として受容させることが可能となるでしょう。私たちと共生している腸内細菌も“自己もどき”であり、健常人では免疫反応が起こりません。免疫反応が起これば炎症性腸炎の原因となります。このような免疫的自己・非自己という概念をもとに新しい免疫医療の現状と展望について講義します。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

日本も含めて先進国では、最近のがん免疫療法の実用化の様に、免疫の潜在能を媒介とした様々な疾患治療法の研究、臨床応用が進んでいます。一方、先進国では感染症をコントロールできる様になり感染症の頻度が下がるに従って、近年自己免疫病、アレルギー、炎症性腸炎などの免疫疾患が増えてきています。衛生的な環境では強い免疫反応を起こす必要がなくなり、免疫系が「鍛えられない」結果、このような免疫疾患が増えてくるのかもしれません。このようなパラドックスを考察しながら、先進国、発展途上国を問わず、医学・医療の未来はどうあるべきか、議論したいと思います。

講師プロフィール

経歴

1976 年京都大学医学部卒業。京大病理、愛知癌センター研究所、京大免疫研究施設を経て1983 年医学博士取得。1983 年よりJohns Hopkins 大学、Stanford 大学博士研究員(Lucile P. Markey Scholar)、1989 年Scripps 研究所、カリフォルニア大学サンディエゴ校Assistant Professor、1992年科学技術振興事業団「さきがけ」研究専任研究員、1995 年東京都老人総合研究所免疫病理部門・部門長、1999 年より京都大学再生医科学研究所教授、2007年より同研究所長、2011年4月より大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授、2016 年より大阪大学栄誉教授、京都大学名誉教授。2004 年William B. Corey Award、2008 年慶応医学賞、2009 年紫綬褒章、2012年学士院賞、同年米国科学アカデミー外国人会員、2015 年Canada Gairdner International Award、同年Thomson Reuters 引用栄誉賞、2017年Crafoord Prize、2017年文化功労者、2019 年英国Birmingham 大学名誉医学博士、2019 年文化勲章、2020年Paul Ehrlich and Ludwig Darmstaedter Prize、その他受賞多数。2016 〜2018 年日本免疫学会理事長。

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