人新世(Anthropocene)を生きる | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

人新世(Anthropocene)を生きる

科学技術のELSIと人間の使命

鈴木 晶子 SUZUKI Shoko
京都大学 名誉教授
国際高等研究所 主席研究員
理化学研究所 客員主管研究員

講義概要

技術文明を享受するだけでなく、その創造の担い手として人類がこれまで歩んできた文明化の過程を科学哲学・教育哲学の観点から掘り下げ、AI技術をはじめとする新たな技術文明の課題に焦点を当てる。技術文明への適応過程で、自らの能力や技能を更新し続ける人間の可能性と限界とは何か。また、18世紀以来の近代啓蒙の時代に構築された近代社会システムにおいてこれまで自明とされてきた基本的事柄は今後どのように変容していくか。本講義では、人新世(Anthropocene)を生きる人間にとって、環境、エネルギー、ゲノム、AIなど将来の世代を展望した長期的責任体系のもとでの技術文明の課題について、その基本的論点を取り上げ、受講生と議論できればと考えている。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

大きな変革期には、動物や機械との比較を通して、人間とは何か、また何を目指して生きるべきか、生きることの意味を問う哲学に再び光が当たり始めている。技術文明の急速な進展にともなう不確実性を制御するために、科学技術をめぐる倫理的・法的・社会的課題(Ethical-Legal-Social-Issues: ELSI)の検討が喫緊の課題となっている。こうした法や倫理の標準化を目指す国際的議論とその社会実装における文化や宗教、習俗の多様性の尊重、イノベーションとレギュレーションの二項対立を乗り越える道を問うこと、その問いの質を上げていくことは、産官学いずれの領域においても「専門家としての私」と「世の一隅を照らす私人としての私」を統合していく要となるだろう。

講師プロフィール

経歴

専門は科学哲学、教育哲学、歴史人類学。伝統的なわざの修練にみる触覚知性や直観の働きの哲学的・歴史人類学的解明を通して、新たな学習論の構築に取り組んできた。2016年より理化学研究所革新知能統合研究センターで人工知能の倫理的、法的、社会的影響について研究プロジェクトを主宰。AI時代の技術文明のあり方や倫理について、OECDやユネスコでの議論に参加。総務省情報通信政策研究所特別研究員、総務省AIネットワーク社会推進会議幹事。ベルリン自由大学客員教授(2009-2010)。日本学術会議会員(2005-2014)、同連携会員(2014-2020)。
DWIH Coffee Talk #6 「AIと倫理」 - YouTube
DAAD/DWIH記事 https://www.dwih-tokyo.org/ja/2021/07/14/connecting-east-and-west-3/
ユネスコAI円卓会議Shaping the Future of AI through Cultural Diversity – YouTube

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