現代のこころ:その問題と可能性

現代のこころを歴史的背景から問う

河合 俊雄 KAWAI Toshio
こころの未来研究センター 教授

講義概要

こころの歴史を考えてみると、それは長いスパンでも短いスパンでも大きく変化してきており、こころの問題への取り組み方も変化してきている。前近代の世界におけるこころの理解とは、共同体、自然、さらにはあの世にまで広がったオープンシステムであり、従ってこころの病と体の病の区別はなく、病とその治療は共同体全体の危機と変革のためであった。西洋近代の個人の成立によってはじめて、個人のこころの病と治療という考え方が成立する。日本においては、「対人恐怖」がその代表的な症状であった。
それに対して、近年の発達障害の増加に見られるように、個人や主体性というこころの概念は揺らいできている。現代のこころはどのような方向に向かっているのか、それへの反動や、そこで生じてくる問題は何なのか、そしてその解決としての創発のような創造的可能性について検討したい。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

現在において、われわれが当然にように考えているこころの捉え方は歴史的に検討すると相対化されるし、また現代のわれわれにもそのような歴史的過去のこころのありかたがこころの古層として生きていることがわかり、古くからの知恵を再発見することにつながる。
科学技術やグローバルなシステムが急速に変化していく現代においても、それを動かしているのは人のこころであるのはたとえば近年の経済学研究でも明らかになっている。人のこころの変化とあり方を理解し、また問題への対応の仕方を知ることで、個人的な問題解決にとどまらない、世の中の変化につながると考えられる。

講師プロフィール

経歴

1987年京都大学大学院教育学研究科博士課程中退。チューリッヒ大学 哲学博士。1988年カランキーニ精神科心理療法家。1990年 甲南大学文学部社会学科助教授。1995年京都大学教育学部助教授。2004年京都大学大学院教育学研究科教授。2007年京都大学こころの未来研究センター教授。

著書

『概念の心理療法』日本評論社(1998年)、『心理臨床の理論』岩波書店(2000年)、“The cultural complex” Brunner-Routledge. 2004(Ed. Singer & Kimbles, 分担執筆)、『京都「癒しの道」案内』 朝日新書(2008年)、『発達障害への心理療法的アプローチ』創元社(2010年)、『村上春樹の「物語」 夢テキストとして読み解く』新潮社(2011年)、『ユング派心理療法』ミネルヴァ書房(2013年)、『大人の発達障害の心理療法と見立て』創元社(2013年)、『ユング - 魂の現実性』岩波現代文庫(2016年)その他多数。