子どものがんを深く知る | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

子どものがんを深く知る

子どものがんを克服するための挑戦と未来図

滝田 順子 TAKITA Jyunko
京都大学大学院医学研究科 教授

講義概要

小児期に発症するがんの本邦における発生率は、年間約2,500人であり、成人がんと比較すると極めて稀である。しかし、小児がんは、本邦において小児期の主要な死亡原因となっている。従って、小児がんの克服は、少子高齢化が進行する本邦において、早急に取り組むべき重要課題と言える。小児がんの中でもとりわけ遠隔転移や再発を来す例は依然として予後不良であり、有効な治療法は確立されていない。これらの難治例に対して現時点では、救命が最優先事項であり、強力な治療がなされているが、救命しえたとしても重篤な晩期合併症が深刻な問題となっている。希少疾患ゆえに認知度が低い小児がんの現状、課題、克服のために進められている研究について概説する。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

現在、国内の小児がんサバイバーは5万人に達すると推計されており、今後増加することが見込まれている。小児がんサバイバーが増加するにつれ、QOLを著しく損なう晩期合併症が深刻な社会問題となっている。これらのがんサバイバーは、複数科の定期的な受診がほぼ一生涯必要であり、一人当たりの医療費は健康な国民と比較すると膨大な額にのぼる。小児がんに対して分子病態に立脚した合理的な治療法の開発がなされれば、重篤な晩期合併症の回避をもたらし、医療費削減が期待できる。単に小児がんの治療成績の向上のみならず、がんサバイバーのQOL向上をももたらし、健全な若年者の育成、ひいては生産人口の増生につながり、社会福祉の向上に与えるインパクトは大きい。

講師プロフィール

経歴

1991年日本医科大学医学部卒業。同年、東京大学医学部小児科入局。1992年焼津市立総合病小児科医員。1993年国立がん研究センター研究所生物学部リサーチレジデントに就任後、小児がんの基礎研究に着手。1996年東京都立駒込病院小児科医員。2000年東京大学医学部附属病院小児科医員、2003年同助手、2005年同無菌治療部講師。臨床の傍ら、基礎研究を継続し、小児固形腫瘍の代表である神経芽腫におけるALKの異常を発見する(Takita et a., Nature, 2008)。2013年東京大学大学院医学系研究科小児科准教授、2018年京都大学大学院医学研究科発達小児科教授に就任し、現在に至る。東京大学医師会賞、日本小児科学会研究学術賞、日本癌学会 JCA-Mauvernay Award 、JCA女性科学者賞など受賞。

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