尊厳ある生と死へのケア | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

尊厳ある生と死へのケア

重篤な病を患う人であることへの支援

田村 恵子 TAMURA Keiko
大阪歯科大学 医療イノベーション研究推進機構 事業化研究推進センター
地域医療等連携部門 専任教授
京都大学 名誉教授

講義概要

わが国の緩和ケアは、これまでがん医療を中心に発展してきました。しかし、現在では、緩和ケアはがんだけではなく、末期心不全や呼吸不全、腎不全など重篤な病を患う人にも適用されるようになりつつあります。緩和ケアは、身体的・精神的症状の軽減を主とする症状マネジメントに焦点があてられることが多いのですが、その本質は病むことや死と向かいあうことを余儀なくされることに苦悩し、これからの人生をどう生きるかについて思い悩む人に寄り添い、一緒に考えていくことにあります。病むことや死と向かいあうことなど人としての根源的な苦悩(スピリチュアルペイン)について、互いに聴くこと、聴きあう「対話」を通して考えてみましょう。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

緩和ケアの本質は、究極の孤独ともいえる状況で苦悩する人に寄り添い続け、一人ぼっちにしないことです。特に、スピリチュアルケアは人生の旅路を辿る人にどう寄り添うか、どのような寄り添いが不安や恐怖を和らげられるかについて探求する営みです。これまで、このような問いは宗教や哲学が取り組むべき課題とされてきました。しかし、スピリチュアルケアが浸透することで、その人の全人的な苦悩が和らぎ、死は生と一体であることに気づくようになりました。死を含む生に焦点があたるようになり、人は何を大切にしてどう生きるかについての探求を始めています。死は単に生理的な出来事ではなく、生にとり不可欠であることが認識されるようになりつつあります。

講師プロフィール

経歴

1996年聖路加看護大学大学院看護学研究科修了。1997年がん看護専門看護師認定を取得。わが国における末期がんに対するホスピスケアの草分けである大阪市・淀川キリスト教病院で1987年より27年間務め、約6000名を超える看取りに向き合う。2006年大阪大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。2014年1月より京都大学大学院医学研究科緩和ケア看護学分野教授に就任。2023年4月より現職。2015年7月より、地域で生活するがん患者や家族、市民が対話を通して聴きあい、生きる知恵や支え合う力を育む市民活動「ともきいき京都」を創始し、ケアリング・コミュニティづくりを目指している。ホスピスでがん患者を最期まで看取り、家族の看護にも取り組む姿がNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」で2008年に放映された。代表的な著書に『余命18日をどう生きるか』(朝日新聞出版)『看護に活かすスピリチュアルケアの手引き第2版』(青海社)、『共に生きるスピリチュアルケア』(創元社)などがある。

  • Document request

    プログラムの受講に関するお問い合わせ、
    資料請求はお気軽にご連絡ください。

  • Mail magazine

    最新情報のお知らせや無料イベントのご案内をしております。ご興味のある方は是非、ご登録ください。

  • Contact

    ご相談やご質問など、お気軽にお問い合わせください。