脳のネットワーク

脳の動作原理の解明に向けて

渡邉 大 WATANABE Dai
京都大学大学院医学研究科 教授

講義概要

生物を取り巻く環境は、一定ではなく時々刻々と変化する。したがって生命の危険につながる外界の変化に対して迅速に対応する能力は、生物にとって極めて重要である。環境は多種多様な要因が複合的に作用するため、その変化は複雑であり正確に予測することは困難である。生物はこのような不確定な未来へ対処する情報システムとして脳を発達させてきた。脳は、神経細胞から構成されるネットワークであり、その動作を介して、情報を収集し、統合的に分析を行い、柔軟に意思決定を下すことで、危機を回避しようとする。しかもこの神経細胞のネットワークは、自己組織的にアップデートし、適応的に能力を高めることができる。本講義では、脳が神経細胞のネットワークであるという観点から、脳の本質について考察し、さらにその病態解明や応用に向けたアプローチについて理解を深める。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

脳のネットワークの研究が進展することで、生物学や医学にとどまらず、様々な自然科学領域に波及効果があり、その発展に寄与する。脳疾患の診断・治療法の開発、革新的なロボット技術や人工知能を可能にする情報テクノロジーの創出など、社会や経済の発展につながると期待される。さらに「人間とは何か」という根源的な問いに迫るためにも、人間らしい考えや心の基盤となる脳の動作について理解することは重要であり、人文・社会科学の広い領域にも資することが期待される。

講師プロフィール

経歴

1990年 京都大学医学部医学科卒業。1997年 京都大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。1997年 京都大学医学部助手、2003年 米国カリフォルニア工科大学博士研究員。2005年 大阪バイオサイエンス研究所システムズ生物学部門副部長を経て、2006年 京都大学大学院生命科学研究科認知情報学講座・医学研究科生体情報科学講座教授兼担。2014年より医学研究科生体情報科学講座教授専任。