コミュニケーションの進化と未来社会

人類の進化を類人猿と比較してその特徴を論じ、未来社会を展望する

山極 壽一 YAMAGIWA Juichi
京都大学 総長

講義概要

現代は不確実性の高い時代と言われ、これからは知識集約型社会のなかで期待値ビジネスが活躍すると考えられている。しかし、それがどんな人間観に基づく社会であるかはまだよくわかっていない。そこで、人類の歴史を有史以前に遡り、生物としての進化史を類人猿と比べ、人類がどのような心身の変化を経験して現代に至ったかを概観する。その上で、情報通信機器が発達し、超スマート社会を迎えるなかで人間の心身と人工的な環境との間でどんなミスマッチがあるか、コミュニケーションと人間関係をどのように構築していったら幸福な社会が描けるかを考えてみることにする。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

今、人間の歴史を見直す作業に注目が集まっている。それは人間と社会がどのようにできたのか、これからどのようになって行くかについて信頼できる見取り図が描けないからである。人間の歴史を有史以前に引き伸ばして考えることによって、人間の由来が明らかになるし、その生物学的な進化を考えることによって、これから遺伝子編集をはじめとした生命科学や生物工学の技術による人間改造にも議論を深めることができる。それは、未来社会を具体的に構想するうえで大きな一助になるだろう。

講師プロフィール

経歴

第26 代京都大学総長(2014 年~)。1952 年東京生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。カリソケ研究センター客員研究員、( 財)日本モンキーセンター・リサーチフェロー、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科教授などを経て2014 年10月総長就任。日本霊長類学会会長、国際霊長類学会会長を歴任。日本学術会議会長、国立大学協会会長、内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員、環境省中央環境審議会委員。1978 年よりアフリカ各地でゴリラの野外研究に従事。現在はゴリラとチンパンジーが熱帯林の同じ場所でどのように共存しているか、他の生物といかに共進化してきたかを研究している。類人猿の行動や生態をもとに初期人類の生活を復元し、人類に特有な社会特徴の由来を探っている。また、コンゴ民主共和国ではゴリラと人との共生を目指したNGO ポレポレ基金を推進している。

著書

『ゴリラの森に暮らす』NTT 出版(1996 年)、『父という余分なもの』新書館(1997年)、『ジャングルで学んだこと』フレーベル館(1999年)、『オトコの進化論』ちくま新書(2003 年)、『人間性の起源と進化』昭和堂(2003 年 編著)、『ゴリラ』東京大学出版会(2005 年)、『サルと歩いた屋久島』山と渓谷社(2006 年)、『いま食べることを問う』農文協(2006 年 共著)、『ヒトはどのようにしてつくられたか』岩波書店(2007年 編著)、『暴力はどこからきたか』NHKブックス(2007年)、『人類進化論』裳華房(2008 年)、『ゴリラ図鑑』文渓堂(2008 年)、『家族進化論』東京大学出版会(2012 年)、『野生のゴリラと再会する』くもん出版(2012 年)、『ゴリラは語る』講談社(2012 年)、『「サル化」する人間社会』集英社(2014 年)、『京大式おもろい勉強法』朝日新書(2015 年)、『ゴリラは戦わない』中公新書クラレ(2017年)、『都市と野生の思考』インターナショナル新書(2017年)、『日本の人類学』ちくま新書(2017年)、『人類の社会性の進化』( 上下)Kindle 版(2018)、『ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」』毎日新聞出版(2018)その他多数。