イノベーションの本質

イノベーション創生論

山口 栄一 YAMAGUCHI Eiichi
京都大学大学院総合生存学館、産官学連携本部 教授

講義概要

イノベーションを定義づけその生成プロセスを分析し、その構造を明らかにして、イノベーションの方法論を考察する。特に、イノベーションの源泉は何か、そしてそれを如何に生み出し価値創造につなげていくかについて、体系的な理論を展開する。まず、クレイトン・クリステンセンの破壊的イノベーションの誤謬の中から新しいイノベーションの構造であるパラダイム破壊型イノベーションを発見し、その表現手法としてのイノベーション・ダイヤグラムを学ぶ。次に、パラダイム破壊型イノベーションの例とりわけ青色発光ダイオードを、イノベーション・ダイヤグラムを描きながら学び、ブレークスルーのタイプ1を深く理解する。次に、ブレークスルーのタイプ2とタイプ3を理解して、イノベーションにとって最重要の次元が「創発」(abduction)と「回遊」(transilience)にあることを理解する。最後に、これらを体系的にまとめあげたのち、イノベーションの創成手法とそれを育む組織の在り方にかかわる研究成果を、全員で討論する。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

日本が沈みゆこうとしている。グローバル化の速い潮流の中で、イノベーションの担い手が「大企業の閉じた系列ネットワーク」から「イノベーターたちの開かれたネットワーク」に変容したにもかかわらず、日本社会は古い産業モデルをいまだに踏襲し続けているからだ。なぜ日本は、世界の潮流から周回遅れに遅れてしまったのか。
それは、1990年代後半に「大企業中央研究所の時代の終焉」を迎えて20世紀型のイノベーション・モデルから脱した後、それに取って代わるべき21世紀型イノベーション・モデルを見つけられずに、漂流しているからである。はたして「大企業中央研究所モデル」という20世紀イノベーション・モデルの次にやってくる21世紀のイノベーション・モデルは何なのか。これを探索するのが、本講義の目的である。

講師プロフィール

経歴

1977年東京大学理学部物理学科卒業。1979年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了、理学博士 (東京大学)。1979年、日本電信電話公社に入社し武蔵野電気通信研究所基礎研究部に赴任。1984年から1985年まで米国University of Notre Dame客員研究員としてインディアナ州サウスベンド市在住。1986年から1998年まで、NTT基礎研究所主任研究員・主幹研究員。この間1993年から1998年まで5年間フランスIMRA Europe招聘研究員として南仏コートダジュールに在住。1999年から2003年まで経団連21世紀政策研究所主席研究員・研究主幹。2003年から2014年まで同志社大学大学院教授、この間2008年から2009年までケンブリッジ大学クレア・ホール客員フェローとして英国ケンブリッジ市に在住。 2014年より京都大学大学院総合生存学館教授、2017年10月より産官学連携本部教授を兼務。5社のハイテク・ベンチャー企業を創業。

著書

近著として、『イノベーションはなぜ途絶えたのか―科学立国日本の危機』ちくま新書(2016)、共著『イノベーション政策の科学』東大出版会(2015)、『死ぬまでに学びたい5つの物理学』筑摩選書(2014)、共著『FUKUSHIMAレポート―原発事故の本質』日経BPコンサルティング(2012年)、『JR福知山線事故の本質―企業の社会的責任を科学から捉える』NTT出版(2007年)、共著"Recovering from Success: Innovation and Technology Management in Japan" Oxford University Press(2006年)、『イノベーション 破壊と共鳴』NTT出版(2006年)など。