分子技術 | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

分子技術

化学から育つ新ディシプリン

山本 尚 YAMAMOTO Hisashi
中部大学分子性触媒センター長、中部大学総合工学研究所所長・教授 米国シカゴ大学名誉教授、名古屋大学名誉教授

講義概要

二十一世紀に入り、様々の研究領域の融合が進んでいる。既存の境界領域研究では不十分で、複数の分野間を貫通した全く新しい研究領域が必要とされている。その中心的な役割を果たしているのが、化学である。

従来、化学は新領域誕生に比較的無縁だったが、真に競争力のある産業分野の創生には分子のレベルでの開発が必須であることが認識されてきた。新学術領域、分子技術とは、「目的を持って分子を設計・合成し、分子レベルで物質の物理的・化学的・ 生物学的機能を創出し、従前の科学技術を質的に一変させる一連の技術」を指している。 その目標とする、分子レベルでの物性創出とは、一言で言えば、「無限に存在する分子から、 課題に向けて最善・最適の分子を合成と理論と計算科学との協働により、自在に設計・合成する究極の物質合成をすること」と言える。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

従来の科学技術は必ずしも分子レベルにまで遡って、オンリーワンの分子を見つけることには十分な努力をしていなかった。しかし、目標に向かって真にオンリーワンの分子を設計することで、長期寿命で、強い競争力のある産業が生まれる。分子技術はこうした背景から我が国独自のディシプリンとして、誕生したもので、今後世界に向けてその重要性を発信してゆくことが期待されている。 さらに、多岐に亘る分野の研究者が分子技術という共通の土台に立って、お互いの研究・技術を見つめ直し、新たな展開を生み出し、幅広い社会ニーズに応えて、物質・材料開発へのブレーク・スルーを成し遂げることを強く意識している。 どのようなテーマを選べば良いのか? 持続的なイノベーションでは新しい市場の開拓は望めない。破壊的なイノベーションに繋がる技術革新が必須となる。これによって、初めて新しい顧客と新しい市場が生まれる。 なぜ、新しい学理の誕生が必要か? 破壊的イノベーションを進めるには、ゲーム・チェンジングが必要である。創造性を求めて既定の認識やパラダイムの拘束から自己解放し、新たな認識基盤を構築せんとする行為、すなわち、我が国からのintellect の誕生が必要であり、これが破壊的イノベーションの誕生に繋がる。

講師プロフィール

経歴

1967年に京都大学工学部工業化学科卒業、1971年米国ハーバード大学大学院博士課程修了Ph. D. 東レ株式会社基礎研究所研究員、1972年より京都大学工学部助手、1976年同大学講師、1977年ハワイ大学淮教授、1980年名古屋大学工学部助教授、1983年同大学教授、2002年シカゴ大学化学教室教授、2012年、中部大学教授。専門分野: 有機化学、生物有機化学、有機金属化学、天然物合成。研究テーマ: 酸触媒の開発、不斉酸化触媒の開発、新しいリガンド設計等。 日本化学会進歩賞(1977年4月)IBM科学賞(1988年)服部報公賞(1991年)中日文化賞(1992年)スイス連邦工科大学プレログメダル(1993年)日本化学会賞(1995年)東レ科学技術賞(1997年)ハーバード大学ティシュラー賞(1998年)フランス化学賞(2002年)、テトラへドロンチェアー賞(2002年)、紫綬褒章(2002年)、モレキュラーキラリティー賞(2003年)、アメリカ科学会、AAS, フェロー(2003年)、山田賞(2004年)、テトラへドロン賞(2006年)、チーグラー賞(2006年)、日本学士院賞(2007年)、フンボルト研究賞(2007年)、日本化学会名誉会員(2008年)、インド化学研究院フェロー(2008年)、有機合成化学協会特別賞(2009年)、アメリカ化学会賞創造賞(2009年)、アメリカ学士院会員(2011年)、野依賞(2012年)、藤原賞(2012年)、米国ロジャーアダムス賞(2017年)。

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