原子力事故からの教訓と日本 | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

原子力事故からの教訓と日本

原子力事故から考える我が国の様々な問題

山名 元 YAMANA Hajimu
原子力損害賠償・廃炉等支援機構 理事長 京都大学 名誉教授

講義概要

福島第一原子力発電所の事故は、被災地に多大な被害を与える共に、我が国のエネルギー政策や国民世論に甚大な影響を与えた。この事故の背景には、原子力の技術的問題だけでなく、原子力産業界の体質的問題、エネルギーや危機管理に関わる政策上の問題、安全規制等の行政上の問題、科学技術分野での問題などが、複合的に存在していたと思われる。さらに、廃炉や復興等の事故後対応にも多くの難題が存在しており、この原子力事故は、我が国における様々な本質的問題や課題の存在を見せつけたと言える。本授業では、この事故に関わる、事故過程・原因・事故対応・事故に至った背景・国内外への影響・被災地復興、などを包括的かつ分析的にレビューし、これらを介して“国レベルの様々な問題や課題”について考察する。さらに、この考察を基にして、今後の我が国における、エネルギー、環境、防災や危機管理、科学技術等の問題に向けた取組みの在り方を議論する。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

今後の我が国を取り巻く世界情勢(グローバル経済、国際政治情勢、地政学的緊張、資源争奪、温室効果ガス削減、等)は極めて不確実であり、我が国は、少子高齢化や財政問題などの大きな課題を解決しながら、よりレジリエントな国に変わってゆかねばならない。このためには、産業、エネルギー、環境、安全、危機管理、産業構造、科学技術開発や教育、情報共有、リスク対話などの様々な分野において、なんらかの本質的な改善や変革が求められることになる。福島第一原子力発電所事故は不幸な事故であったが、この事故の全体像を分析することで、日本の産業や社会に内在していた本質的かつ複合的な問題を理解することが可能である。この事故を奇貨として、原子力事故から我が国の本質的な課題を学ぶことは、今後の日本社会を構想する上での大きなヒントを与えると期待できる。

講師プロフィール

経歴

1981年東北大学工学博士。1981年~1996年、旧動力炉・核燃料開発事業団にて、主任研究員として再処理開発や先進リサイクルシステム開発に従事。1996年より京都大学原子炉実験所助教授。2002年より教授。専門は、アクチニド元素の放射化学、核燃料サイクル工学など。2013年8月より発足した、福島第一原子力発電所廃炉技術の開発にあたる、技術研究組合・国際廃炉研究開発機構の理事長を務め、2014年8月からは、政府認可法人である原子力損害賠償・廃炉等支援機構の副理事長に就任。2015年9月からは同機構理事長として、福島第一発電所の廃炉戦略立案の統括や、東京電力による被災者賠償・廃炉などの事業の監督にあたっている。福島県の事故被災地の復興政策に関わる政府検討委員会の委員も務める。2013年より総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会、同分科会原子力小委員会、長期エネルギー需給見通し委員会などの委員としてエネルギー基本計画や原子力政策の策定に関わってきた。

著書

『間違いだらけの原子力・再処理問題』WAC出版(2008年)、『放射能の真実』電気新聞ブックス(2011年)、『それでも日本は原発を止められない』産経新聞出版(2011年、共著)、山名元編著『原子力安全基盤科学1:原子力発電所事故と原子力の安全』京都大学学術出版会(2017)、山名元編著『原子力安全基盤科学2:原子力バックエンドと放射性廃棄物』京都大学学術出版会(2017)、河田恵昭編『災害対策全書別冊:「国難」となる巨大災害に備える~東日本大震災から得た教訓と知見~』ぎょうせい(2015年、福島第一原子力発電所事故への対応を部分執筆)

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