バイオマス科学、ナノファイバー工学

生き物の力を借りて高性能材料を作る戦略

矢野 浩之 YANO Hiroyuki
京都大学生存圏研究所 教授

講義概要

セルロースナノファイバー(CNF)は、木材をナノオーダーにまで微細化することで得られる産業資材である。地球上には一兆トンに蓄積があり、鋼鉄の1/5の軽さで、その5倍以上の強度を有する。次世代の大型産業資材あるいはグリーンナノ材料としてセルロースナノファイバーの製造と利用に関する研究が、今、世界中で活発化している。我が国においても、アベノミクス成長戦略に、「セルロースナノファイバーの研究開発等によるマテリアル利用の促進に向けた取組を推進する。」ことが明記され、社会的な注目度が急速に高まっている。
本講義では、木材等、植物バイオマス資源からのセルロースナノファイバーの製造とその自動車部材や電子デバイス部材への応用について、京都大学で行っている研究を中心に紹介する。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

我が国では人工林の蓄積量が毎年7500万m3増加している。木材1m3の重量を約400kgとすると、その半分はセルロースナノファイバーなので、毎年1500万トンのセルロースナノファイバーが人工林で増え続けていることになる。それは我が国における年間プラスチック消費量の約1.5倍の量に匹敵する。
また、セルロースナノファイバーは、稲ワラや竹、コットンなどからも同様に生産できる。
この様な持続的に生産されるセルロースナノファイバーを活用することで、自国の資源で自動車や情報家電に使用できる高性能で環境負荷の小さいバイオ素材、部材を大量に製造し、海外に輸出する時代が来る。

講師プロフィール

経歴

1982年3月 京都大学農学部林産工学科卒業、1984年3月京都大学大学院農学研究科修士課程林産工学専攻修了。1986年9月京都大学大学院農学研究科博士課程林産工学専攻退学。1986年10月京都府立大学農学部助手。1992年2月京都府立大学農学部講師。1998年10月京都大学木質科学研究所助教授。2004年4月京都大学生存圏研究所教授。2010年4月〜2014年3月京都大学生存圏研究所生存圏学際萌芽研究センターセンター長兼任。現在に至る。1989年3月、日本木材学会奨励賞『楽器響板用材の音響特性とその改質』、2005年7月、セルロース学会林治助(はやしじすけ)賞『セルロースミクロフィブリルを用いた高機能ナノコンポジットの創製』、2009年1月、日本木材学会賞『セルロース系ナノ材料の開発』。2016年、第37回本田賞受賞。セルロース・ナノファイバー(CNF)の高効率な製造法の考案、製品への応用、将来の可能性拡大に対して貢献。専門は、木質材料学、生物機能材料学。