量子コンピューターがもたらす情報革命
量子ゲート方式の原理とセキュリティ社会へのインパクト

2019.2.1.Fri. 9:30-12:40

大阪大学 名誉教授 井元信之

講義の概要と目的

「0」と「1」以外にそれらの重ね合わせ状態を使う量子コンピューターは、00…0から11…1までの2のn乗通り(nは量子ビットの個数)の入力に対しパラレル処理ができる。このため従来は「事実上計算できない」とされて来た課題を解決することができる。このため情報セキュリティ社会を支える現在の暗号は量子コンピューターによって破られるので、これは社会に大きな影響が予想される。ここでは量子コンピューターの代表である量子ゲート方式の原理を解説し、量子コンピューターはどんな問題が解けるのか、現在の暗号がなぜ破られるのか、量子暗号はなぜ破られないのかを解説し、これらの将来像をさぐってみたい。

この研究が世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

その問題を解くために必要な計算ステップ数が、入力の情報量に対し指数関数的に増える計算問題は、入力のサイズを増やした途端に計算できなくなる。例えば創薬研究など物質情報量に対する物質の性質の予測や、日数を増やした場合の天気予報がある。これらが量子コンピューターで計算できるようになればすばらしい。一方で現在の暗号方式の大半は量子コンピューターで「それを破る計算ができる」ことが知られており、その範囲も広がっている。量子コンピューターや量子暗号を手にした国が出現し、それ以外の国が持っていない場合どういうことになるか。好ましいインパクトも脅威も予想される分野である。

講師プロフィール

大阪大学理学研究科附属基礎理学プロジェクト研究センター特任研究員
NTT基礎研究所時代に日本で最初に量子情報処理(量子コンピューターと量子暗号)の研究を開始し、1992年に解説記事を翻訳、1995年に量子暗号論文を出版する。以後総合研究大学院大学教授を経て、大阪大学大学院基礎工学研究科教授となり、NatureやNature Photonicsなど論文総数約250、うちトップ1%が3本、トップ2%が2本などトップ90%以上22本(10月2日SCOPUSデータ)。2018年4月より大阪大学名誉教授とともに現職。異分野の統合化と局面展開から物理と情報科学の統合を目指す。著書に『SF小説がリアルになる量子の新時代』(共著、2009年、朝日新書)、『量子情報の物理-量子暗号、量子テレポーテーション、量子計算-』(共訳、2007年、共立出版)。

Day32019.2.1 Fri.
量子コンピューター

お申し込みはこちら

お申し込みは下記ページのエントリーフォームよりお願いいたします。

お申し込みはこちら

初めての方でもお気軽にお問い合わせください

お問い合わせはこちら

Tel. 075-753-5158

受付時間:平日 9:00〜17:00



Mail. info@elp.kyoto-u.ac.jp