講義の概要と目的
量子コンピューターを理解するためには、量子ビット(qubit)という概念を最初に理解しなければならない。それは、デジタルコンピューターにおけるビット(0と1)という「数字」ではなく「状態」に他ならない。この「状態」とは量子力学における「量子状態(quantum states)」ないし「固有状態(eigenstates)」のことであって、一般に量子コンピューターの講義では、時間制約のために量子力学の根本的な講義を、「すでに習った」として回避することが通例である。
しかし本インテンシブELPでは、第3日目に行なわれる量子コンピューターの授業をより深く理解するために、前もって量子力学の超入門講義を行なおうと考えた。そこで、本講義は「あしたのために」と題して量子力学を習ったことのない方々に照準を合わせ、量子力学が生まれた歴史とその着想、さらにはその思想にまで立ち戻って、量子力学への入門を果たす。
この研究が世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか
量子力学は、20世紀に生まれた諸科学のなかでもっとも崇高で重要な科学であって、森羅万象の根本原理そのものなので、これを知らずに一生を送るのは、全くもってもったいない。さらに、現代のハイテクの核心をなすナノテクノロジーは、量子力学なしでは成立しないので、ハイテクを根本から理解するためにも必須である。量子コンピューターの理解のためのみならず、人生を豊かにするためにこそ、学んでほしい。
講師プロフィール
1977年東京大学理学部物理学科卒業。1979年東京大学大学院理学系研究科
物理学専攻修士課程修了、理学博士 (東京大学)。1979年、日本電信電話
公社に入社し武蔵野電気通信研究所基礎研究部に赴任。1984年から1985年
まで米国University of Notre Dame客員研究員としてインディアナ州
サウスベンド市在住。1986年から1998年まで、NTT基礎研究所主任研究員・
主幹研究員。この間1993年から1998年まで5年間フランスIMRA Europe招聘
研究員として南仏コートダジュールに在住。1999年から2003年まで経団連
21世紀政策研究所主席研究員・研究主幹。2003年から2014年まで同志社
大学大学院教授、この間2008年から2009年までケンブリッジ大学クレア・
ホール客員フェローとして英国ケンブリッジ市に在住。 2014年より京都大学
大学院総合生存学館教授。2017年10月より産官学連携本部教授を兼務。
5社のハイテク・ベンチャー企業を創業。