京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

AIと法

AIは法をどのように変えるのか?

稲谷 龍彦 INATANI Tatsuhiko
京都大学大学院法学研究科 教授

講義概要

本講義では、AIが法に及ぼす影響について、①AIを活用するために法はどのように変化する必要があるのか(AIガバナンス)、②AIが用いられることによって法システムはどのように変化することになるのか(リーガルテック)の、相互に関係する2つの視点から解き明かすことを目的とする。人間の大規模な協調活動を可能とする認知的ニッチとしての法の構築・運用にAIが関与することは、理性と自由意志を持つ自律的個人としての人間を基礎とする近代的な法のあり方に根本的な変容をもたらす可能性がある。この可能性を理解しつつ、AIと法との望ましい関係性を問うことは、DXが進む世界における人間の望ましいあり方を問うことに他ならないといえるだろう。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

AIと法との関係性については、既に様々な研究がなされているが、その多くはAIが人間や社会のあり方をどのように変える可能性があるかについて深く踏み込むものではない。その理由は、先行研究の多くが、理性と自由意志を備えた自律的個人としての人間という西洋近代的な人間像を所与の前提として、AIをその秩序の中に置くことにとどまっているからである。しかし、このような人間像に対しては、20世紀後半以後の現代思想において深刻な疑問が呈されてきたのみならず、認知科学をはじめとする実証的な研究とも整合するものではない。AIが西洋近代的な人間観と相容れない側面を有することが理解されるにつれて、人間観そのものをアップデートし、AIを規律しつつAIを最大限に活用できる法システムのあり方を検討することが不可欠となっている。本研究は、このような喫緊の問題意識に応え、AI時代の新たな法のあり方を問うことを通じて、既存の法秩序のあり方にグローバルなレベルでインパクトを与えようとするものである。

講師プロフィール

経歴

2005年東京大学文学部卒。2008年京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了。同年より京都大学大学院法学研究科助教。2011年より同准教授。2021年より現職。2013-2014年にかけてパリ政治学院法科大学院、2014-2015年にかけてシカゴ大学政治学部において在外研究。専門はグローバルな企業犯罪法制を中心とする企業犯罪法制と科学技術法ガバナンス。京都大学法政策共同研究センターにおいて、学際的な研究ユニットである「人工知能と法」研究ユニットのPIを務める。内閣官房・経済産業省・デジタル庁等において、日本社会のDXに関する各種有識者会議の委員を務めている。

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