
待鳥 聡史
MACHIDORI Satoshi
京都大学大学院法学研究科 教授
講義概要
世界的な「選挙イヤー」であった2024年を経て、世界の民主主義は明らかに脆弱性を高めた。日本を含め、安定した基盤を持つ政権は少なくなり、各国政治は内向きな傾向を強める一方で、国際政治には多くの不安定要因が生じている。一部には民主主義体制を放棄するように見える動きさえ存在する。このような状況はどこから来て、どこに向かうのだろうか。権威主義体制が優越する時代が到来するのだろうか。この講義では、主に民主主義体制下における政党政治の応答性という観点から、比較政治学の知見を活かした現状認識と将来展望を提示し、受講者の皆さんが世界を理解する手がかりを得ることを目的とする。
世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか
政治学を含む社会科学の研究成果は、直接世の中を変えることを目的にはしていない。しかし、その成果を受け止める人が、研究対象となっている事象や人物への理解を深め、現象が生じている理由を知ることで、自らの立場や行動を変化させると、世の中を変えることになる。今回の講義の場合も、現在の民主主義の基本原理は何か、そこに政党がいかに関わってきたのか、なぜ課題が生じているのか、といったテーマについて、理論的な検討や幅広い比較を通じて考察することで、受講される方が現代政治との向き合い方を変えることにつながるかもしれない。
講師プロフィール
経歴
1971年生まれ。京都大学法学部卒業、同大学院法学研究科博士後期課程(政治学専攻)退学。京都大学博士(法学)。大阪大学法学部助手・助教授、京都大学大学院法学研究科助教授などを経て、2007年より現職。2022~24年、京都大学公共政策大学院長。この間、ウィスコンシン大学大学院政治学研究科、カリフォルニア大学サンディエゴ校大学院国際関係論・太平洋地域研究科で在外研究。専門は比較政治論、とくに民主主義体制下での大統領や首相の権力基盤、議会や政党との関係について研究している。
著書
主要業績として、『財政再建と民主主義』有斐閣、アメリカ学会清水博賞(2003年)、『首相政治の制度分析』千倉書房、サントリー学芸賞(2012年)、『代議制民主主義』中公新書(2015年)、『政治改革再考』新潮社(2020年)、Political ReformReconsidered, Springer (2023年)など。