
山本 淳子
YAMAMOTO Junko
京都先端科学大学 国際学術研究院 教授
講義概要
『源氏物語』とその作者・紫式部の名は良く知られています。ことに2024年にはNHKで紫式部を主人公とした大河ドラマ「光る君へ」が放映され、武者の世界の多かった大河ドラマ史に一石を投じました。ただ、『源氏物語』は長く難解で読み通すことが困難なのも事実です。また、最後まで読みおおせても多くの疑問が心に残ることでしょう。
そこでこの授業では、まず『源氏物語』全体の内容を解説します。光源氏の誕生から栄華を極めるまで、その人生に翳りが見え出家を決意するまで、そして彼の子や孫が活躍する宇治十帖の世界と順を追って、テーマの変遷やその意味についても説明します。また、物語のなかから特に現代と共通する問題を取り上げ、今を生きる私たちが『源氏物語』を読む意味についても考えます。
世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか
古典文学といえば、高校の授業が眠かった記憶しかないという方が多いでしょう。または貴族文化という古めかしく権威的なイメージでとらえられることも多いでしょう。しかし『源氏物語』は、千年前にはエンターテインメントでした。またそのテーマも多様で、恋愛や美だけではなく、例えば政治・権力、友情、親子の関係、人間の成長と衰え、女性の精神的自立など、様々な問題を読み取ることができます。例えば最近ようやく日本社会で取りざたされるようになった「不同意」の性関係などについても、『源氏物語』は鋭く切り込んでいるのです。『源氏物語』を知ることで皆さんがインパクトを受け、まずは自分自身の在り方、ひいては周囲との関係性を考えることが、世の中を変える引き金となるかもしれません。
講師プロフィール
経歴
平安文学研究者。石川県出身。京都大学文学部を卒業後、石川県立図書館で自治体史『加能史料』の編纂に関わる。その後、高校教員を務めたのち、京都大学大学院人間・環境学研究科に入学。地域文化研究を専攻し、文学と歴史、宗教の壁を超えた学際的研究を志す。2003年、京都学園大学助教授。2007年、『源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり』(朝日新聞出版)でサントリー学芸賞(芸術・文学部門)を受賞。2008年、京都学園大学教授。2019年、校名変更により京都先端科学大学教授。
著書
著書は受賞作のほか、学術論文集『紫式部集論』『紫式部日記と王朝貴族社会』(いずれも和泉書院)、注釈書に『ビギナーズクラシックス 日本の古典 紫式部日記』『紫式部日記 現代語訳付き』(いずれも角川ソフィア文庫)、教養書に今回の教科書『平安人(びと)の心で「源氏物語」を読む』や『枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い』『道長ものがたり 「我が世の望月」とは何だったのか』(いずれも朝日新聞出版)など。なお、2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」に関して、NHK財団のウェブサイト「ステラnet」において1年間、コラム「山本淳子の平安ドラマチック」を連載した。