京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

西洋美術の革新者たち

「行為」をうながす絵画/絵画という「体験」

平川 佳世 HIRAKAWA Kayo
京都大学大学院文学研究科 教授

講義概要

本講義では、美術史学の思考法や研究法を学び、美術史研究の最新の動向に触れることで、巨匠たちの創造行為の本質に迫ります。題材として取り上げるのは、15、16世紀、すなわち、西洋美術史の革新の時代です。「ルネサンス」と一般に呼ばれるこの時代には、イタリアやネーデルラント(現在のベルギー、オランダなどに該当)をはじめとするヨーロッパの各地で、まさに「巨匠」の名に相応しい才能あふれる芸術家たちが活躍しました。ファン・エイク、レオナルド・ダ・ヴィンチ、デューラー、ラファエロ、ミケランジェロ…。本講義では16世紀の国際商業都市アントウェルペン(アントワープ)で活躍した巨匠クェンティン・マセイス作《両替商とその妻》(ルーヴル美術館蔵)について多角的な視点から考察することで、絵画に秘められた「様々な意味」について迫ります。

世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

情報化社会の急速な進展、国際紛争、グローバルな人と物の流れ…。目まぐるしく変化する状況のもと、より
よい未来へと続く持続可能な社会の構築のため、今日の私たちには、新たな時代を切り開く柔軟な発想とそれを実現する協働が求められています。本講義では、前近代の絵画に秘められた複雑な要因を紐解くことで、「芸術作品は芸術家個人の創造力の所産であり、美的に味わうもの」という考えから一歩進んで、より多面的な芸術理解を目指します。さらに、名画という「卓越した商品」が、ダイナミックに変容する社会通念に対する鋭い洞察、作り手の優れた発想力と技術力、需要者たちからの助言や要望、国際商業都市ならではの情報ネットワークといった総力を結集して、生み出される様を、追体験します。

講師プロフィール

経歴

1991年京都大学文学部史学科(考古学専攻)卒業。ビクター音楽産業株式会社勤務を経て、1993年京都大学文学部哲学科(美学美術史学専修)に編入学、1995年同大学院修士課程に進学、2000年同大学院博士後期課程を研究指導認定退学。その間、1998年10月より1999年3月までウィーン大学に留学。博士(文学)(京都大学)。2001年、近畿大学文芸学部講師に着任、助教授、准教授として2008年度まで教鞭をとる。その間、2007年9月より2008年3月まで、ローマ、マックス・プランク美術史研究所に研究滞在。2009年より京都大学文学研究科准教授、2014年3月より半年間、客員研究員としてトリーア大学に滞在、2017年より現職。専門は北方ルネサンス絵画史。

著書

The Pictorialization of Dürer’s Drawings in Northern Europe in the Sixteenth and Seventeenth Centuries, Peter Lang, 2009、中村俊春編『絵画にみる私的世界の表象』(「変容する親密圏/公共圏」第3巻)京都大学学術出版会、2012年(共著)、「スプランゲル作《最後の審判》――銅板油彩画の宗教的機能に関する試論」(『京都美術史学』第1号、2020年、所収)等。

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