
山敷 庸亮
YAMASHIKI Yosuke
京都大学大学院総合生存学館 教授
講義概要
月や火星など他の天体への移住を考えた際、まずは我々の惑星地球がどのような環境か、そしてどういった条件があれば地球外に居住、ひいては移住できるかを考えなければならない。これを考えるうえで重要となる概念を「宇宙移住のための3つのコアコンセプト:コアバイオーム、コアテクノロジー、コアソサエティ」と定義した。地球上ではこの要素のいくらかが欠けたくらいでは死者が多く出ることはないが、宇宙ではこのうちのどれか、特に生存基盤技術を支えるコアテクノロジーに異常が生じた段階で生命へのリスクが顕在化する。宇宙での我々の未来を探るためには、まず我々が地球でどのように生きているか、生きるべきかをもう一度問いただす必要がある。特に、人間の生存のみに焦点を当てる「生存基盤的区分」と、人類は生きるためには必ず自然と共生が必要であると考える「自然資本的区分」について考え、宇宙の中で人類がどのような存在であるかをもう一度問いただす。さらに惑星全体のテラフォーミングではなく惑星の一部に地球環境を再現する「テラウインドウズ」の考え方について述べる。
世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか
月面開発、宇宙ホテル、そして火星への探査など、次世代に向けて大きな変革が見られる中、宇宙に居住する意義、そして宇宙居住における問題点と解決のためのコアテクノロジー(放射線防御技術、人工重力技術、生命維持・環境制御技術、生態系維持技術、食料生産技術)を学ぶことにより、これからの世の中を牽引するイノベージョン技術と、地球環境保全技術、さらに宇宙時代の各国の地政学についても学ぶことができる。
講師プロフィール
経歴
1990年に京都大学工学部を卒業し、1994年にサンパウロ大学工科大学院(EPUSP)で修士課程を修了、1999年に京都大学で博士(工学)を修得。その後、日本大学理工学部講師・准教授、東京大学非常勤講師、京都大学防災研究所准教授などを歴任し、2014年より大学院総合生存学館教授。 水環境工学や水資源工学を専門とし、陸域と海洋の相互作用に関する研究を行ってきた。2011年の福島第一原子力発電所事故後は、水環境中の放射性物質の挙動と影響評価に焦点を当てた研究に従事、数々の論文を執筆する。2015年からは宇宙における水の研究を推進し、系外惑星のハビタブルゾーンと放射線環境を比較可能な太陽系外惑星データベース「ExoKyoto」を開発・公開する。また、2019年からはアリゾナ大学の人工隔離生態系「Biosphere 2」を用いたスペースキャンプを企画・実践し、宇宙居住研究に取り組む。著書に『有人宇宙学: 宇宙移住のための3つのコアコンセプト』があります。現在は、3つのコアコンセプトのコアバイオーム・コアテクノロジー・コアソサエティの実現に向けてNASAをはじめとする国際共同研究をはじめ企業との共同研究を行なっている。